《怪醫黑傑克 / 平安遷都》
京都の駅ビルの中にあった手塚治虫ワールド(2011年1月16日閉館)の中に300インチシアターという劇場があり、そこで上映されていたオリジナル短編アニメ。
手塚漫画の代表作の、そのエッセンスを詰め込んだアニメーション作品と、京都にまつわる歴史的なエピソードを紹介するアニメーションとの二本立てという形で上映され、その二本を火の鳥がストーリー・テラーとなってつないで行く、という構成です。
「限られた命の中で、愛はどのように不変の力として成長して行くのか」というテーマを、火の鳥は『ブラック・ジャック』のエピソードの中から「おばあちゃん」という物語を選んで紹介します。
お金にがめつくて、嫁に対して口を開けば「お金をちょうだい」と小遣いをせびってばかりいる老婆。
そんなおばあちゃんに息子夫婦はうんざりしています。
家の中はだから口論が耐えず、やすらかな日常は失われているように見えます。
ひょんなことからこの一家と知り合ったブラック・ジャックはやがてこのおばあちゃんが瀕死の重病にかかった幼い息子を救うため、大金を要求する名医に治療してもらった過去がある、と知るのです。
息子の命を救った医者への治療費を彼女は何十年もかかって払い込み続けているのでした。
息子への愛。
その代償として、生涯を治療費を払うことだけに費やした老婆。
そしてそんな母の思いを知らず、嫁とのいさかいの間に立ってため息をつくだけだった息子。
彼が母の真実を知った時、彼はそこに「自分の人生よりも大事な我が子への愛」に生きた母なるものの「愛」を思い知ることになるのです。
そして同じだけの愛で母を愛せるのか、とブラック・ジャックは彼に問いかけます。
火の鳥はそんな「命よりも大事な愛」こそが永遠の命を持つのだと語り、そしてひとつの都市そのものに永遠の命を与えようとした一大国家プロジェクト『平安遷都』について語っていきます。