《宇宙兄弟》
兒時的約定你是否還記得呢?
四月動畫新作《宇宙兄弟》故事描述一對大時代洪流下出生的兄弟,為了遵守彼此童年約定,而不斷朝兒時夢想努力的愛與勇氣與冒險的熱血作品!
漫畫家小山宙哉自 2008 年開始於講談社的「Morning」連載,除了趕搭今年 4 月推出動畫版之外,5 月日本也即將上映真人電影版。
《宇宙兄弟》故事內容講述 12 的歲主角「南波六太」與其 9 歲的弟弟「日日人」,在 2006 年做野外觀察時,不小心撞見正要飛到月球的 UFO,因而兩兄弟相互立志,有朝一日要成為太空人。
而時間就這樣到了 2025 年,弟弟日日人如期成為了 NASA 總部的太空人,並且準備要向月球邁進,而哥哥六太則成為一名優秀的汽車設計員,卻因上司批評弟弟日日人的成就,而對主管賞一記「頭鎚」最後慘遭公司「紅牌出局」。
就在一個看起來事業如日中天,另一個卻每次到緊要關頭就遇到超展開劇情一般,兩人看似完全不同的命運就在六太歷經幾番波折後,在收到了來自弟弟日日人的信件後,決定回到最初彼此的約定,以成為太空人為目標。
《宇宙兄弟》算是節奏非常快的一部作品,從故事第一話一開始就馬上切入兩兄弟的出生背景,為往後劇情埋下伏筆,尤其作品裡面更不乏許多日本人才會懂的許多歷史時事,若是稍有分神就會跟不上進度,算是「真材實料」故事架構非常豐富的作品。
除了整體的作品架構完整成熟,更重要的就是在於在觀賞的時候也很容易進入到劇情,讓人不自覺的也默默的燃起心中的小宇宙(笑)。
加上故事內容勵志,兄弟間即使彼此在長大後走向不同人生道路,雙方間的情誼不是靠言語直接表現,而是從許多實際動作展現出來,這種感動的衝擊比起用說的更來的動人。
其實《宇宙兄弟》用的許多搞笑手法與《銀魂》有些類似,到處都可看到充滿大小吐嘈梗,尤其更是以非常貼近生活中的方式,因此能在讓人笑到頂點處的時候,突然又轉換到人們心中最原始而單純的感動,進而觸動到觀眾的小小心靈,情緒上的轉折變化讓人就是想一直看下去。
有歡笑、有淚水、更有滿滿的夢想與勇氣,想必這應該就是每個看完《宇宙兄弟》的人都能有共鳴的感覺吧。
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第99話 人生可變,約定不變
『兄とは常に、弟の先へ行っていなければならない』子どもの頃から、兄・六太はずっとそう思っていた。だが、何かにつけて先へ行っていた、弟・日々人。しかし今は、自分が日々人の先に行っているのか、後ろにいるのか、なにもわからない。それは、日々人が何も言わず、六太の前から姿を消したからだった。日々人が心配で、訓練にも集中できない日が続く六太。そんな様子を見かねた新田が、珍しく六太を飯に誘った。ピザを食べながら、新田は自分の弟・カズヤの話を始める。以前引きこもりだったカズヤは、今は外にも出られるようになり、バイトにも行くようになったらしい。さらに、ずっとやりたがっていた、宇宙関連の会社の入社試験を受け、筆記試験を通って面接まで行ったとのこと。だが結果は、不合格だった――。『過去に何もせず引きこもりの経験がある人間は、大事な時にまた引きこもる可能性がある』その会社の上司数名から、そう判断されてしまったのだ。日々人の現状と重ね、カズヤを心配する六太。しかし、カズヤは英会話の勉強をはじめ、ヒューストンで仕事を探すことに決めたらしい。六太は願った、日々人もカズヤのように前に進んで欲しい――と。その帰り際、ようやく六太のもとに、日々人からメールが届いた。『久しぶりムッちゃん。しばらくずっと死んでたけど。なんとか最近生き返りつつあるよ』どうやら日々人は。今までアメリカのいたる所をブラブラと一人旅していたらしい。そして六太に、自分がNASAを去ることを明かす。『だけど心配はいらねーよムッちゃん。宇宙飛行士を辞めるつもりはねーから』後日――。NASAの室長バトラーは、JAXAの星加と話し合っていた。日々人が再び月に行けるように、星加が協力してくれていたのだ。「なんてことはない。アストロノートからコスモノートって呼び名に変わるだけだよ――って言ってましたよ。日々人君は」日々人はNASAを離れ、ロシアで宇宙飛行士となり、再び月を目指すことにしたようだった。半年後――。六太はキャプコムとして、月へ向かうビンスを送り出していた。誰もがビンスたちの乗ったアレスワンを見上げている頃、六太の心は、日々人からあの日届いたメールの、最後の一文を思い出していた。『月面で会おう』六太には、いま日々人が何をしているのか、知ることはできない。だが、六太は信じていた。日々人も、必ずどこかで月へと近づいているはずだと――。
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第98話 最強的宇航員
日々人が突然姿を消してから、数日が経過していた――。近所の人たちや、親しいNASAの同僚も、誰一人、日々人の居場所を知る者はいなかった。日々人からの連絡は一切なく、その安否を心配した六太は、訓練にも身が入らないでいた。子どもの頃、日々人が突然いなくなった時のことを思い出す六太。その時に日々人を心配して捜したのは、六太だけだった。「今度また勝手にいなくなっても、もう探しに行かねーからな俺!」飄々として反省の色を見せない日々人に、怒った六太。その際日々人は、『次行くときは、メモを残すか、テレパシーを使う』と約束したのだった。だが今回も、メモもテレパシーも残されてはいなかった。日々人からの連絡を待つ六太に、バトラーから電話がある。ようやく六太は、日々人はもう宇宙飛行士として復帰できないことを知ることとなる。日々人の復帰を反対している、マネージャー・ゲイツの機嫌を損ねれば、今度は六太が、月へのチャンスを奪われかねないらしい。安否を心配し、日々人にメールを送る六太。『今のままじゃ、お前が生きてんのかどうかもわからん。何でもいいから返信よこせ』能天気な両親たちですら、さすがに心配していた。『生きてるか死んでるか、どっちか教えてくれ。……なんとか言えよ日々人……テレパシー使えんだろ。全然聴こえてこねーんだよ!』その翌日から――。六太は日々人が復帰できるよう嘆願書を作成し、署名を集めていた。同僚や仲間たちは、快く署名してくれ、みんな日々人の復帰を願ってくれた。反対しているのは、NASA上部だけだった。『一人の人間が積み上げてきたものを何だと思ってる……! 俺の弟のことを何だと思ってる……!』日々人への理不尽な扱いに、六太は苛立ちを隠せないでいた。一方、室長室では――。バトラーが、日々人のことで直訴しにきた、六太の言葉を思い出していた。『その目で見たら、日々人は不運な弱者に見えますかね?』六太の目で見た日々人は真逆だという。月の事故では暗闇の谷底から仲間を救い出し、最善の判断で無事生還した日々人。その後のパニック障害も、もちまえの根性で克服して見せた日々人。六太の目には、日々人は他のどの宇宙飛行士よりも本当の恐怖を知っていて、それを乗り越えた最強の宇宙飛行士だった。その言葉に、バトラーは心底同意していた。だが今は、なすすべがないのだ。だがそこに、JAXA職員・星加から電話があって――……?
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第97話 不會消失
ヒューストンで初めての正月を迎えた南波一家。南波・母は初笑いのためにお気に入りのDVDまで持参し、家族4人、そろって年越し『うどん』を食べていた。しかし日々人は、まだ次のミッションが決まらず、不安な毎日を過ごしている様子。室長・バトラーは最善を尽くしてくれているようだが、どうやら日々人の復帰に反対している人物がいるらしく、未だに訓練が少ないという。「なあ、ムッちゃん。もしかしたら……俺はもう月に行けないかも」日々人の思いがけない言葉に、衝撃を受ける六太。『復帰試験に合格したのだから大丈夫だ』と励ますが……。「俺も最初はそう思ってたんだよ。克服すれば万事解決、またすぐ宇宙に行けるって。だけど全くアサインされそーな気配がなくてさ。それで……なんとなく気付いたんだ」六太は、不安に押しつぶされそうになっている日々人の声に、緊張を隠せないでいた。「俺の中からパニック障害が消えても……まわりの頭ん中からは消えないんだ」努力して足掻いても、『南波日々人はパニックを起こした宇宙飛行士』という事実は、周囲の意識から消えないらしい。NASAの会議室では——。室長バトラーは、マネージャーであるゲイツを説得しようとしていた。このゲイツこそが、日々人を復帰させたくない人物なのだ。日々人が克服できたのはプールの中だけ、『月面で発作は起こらない』と断言できない以上、復帰させることはできないとゲイツ。「樽一杯のワインにスプーン一杯の汚水を注ぐと……それは樽一杯の汚水になる」さらにゲイツは、日々人を『毒』とまで表現した。「樽一杯のワインの中に、スプーン一杯の毒……『もう飲んでも大丈夫ですよ』と言われたところで……君なら飲むか? 飲めるワインは他にもあるんだ。バトラー」その問いに、バトラーは答えることが出来なかった。その結果、バトラーは日々人に、もう宇宙飛行士として、NASAでは復帰できないことを伝えた。「大丈夫ですよ。バトラーさん……こうなる予感はありました。俺はもう宇宙へ行けないって。そんな気はしてました」日々人はもう覚悟を決めていたようだった。日々人から『もう月へは行けないかもしれない』と聞いた、翌朝——。六太は、出まかせでもいいから日々人に一言、『なんとかなる』と言ってやろうと決めていた。だが、もう遅すぎた。日々人は姿を消しており、六太は何も伝えられずに、その機を逃してしまったのだ——。
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第96話 既是宇航員又是父親
クリスマスが近づく頃、ケンジには家族が一人、増えようとしていた。妻・ユキに、第二児の出産が近づいていたのだ。そのため、父親として出来る事をしようと、妊婦であるユキの代わりに、娘・風佳を幼稚園に送るようになったケンジ。父親として奮闘する姿は、一見充実した日々にも見えたが——宇宙飛行士としてのケンジは、実は不安を抱えていた。それは、六太が月に行くことに決まったかわりに、ケンジが月に行ける可能性が消えたからだった。次のミッションが決まっていないという、ゴールの見えない不安。NEEMO訓練以降、ケンジはずっと、何を目指しているのか曖昧なまま、ひたすら言われた訓練を続けていた。そして、クリスマスの日——。テキサスロードハウスでは、宇宙飛行士やNASAの職員たちが集まって、パーティーが行われていた。カントリーダンスの音楽を奏でるバンドには日々人が加わっており、ステップを踏んでいる人々の中には、カウボーイハットをかぶったせりかや六太が、楽しげに踊っていた。ケンジも新田と一緒にパーティーには参加していたが、その表情は2人とも明るくはなかった。まだ2人には、この後にやるべき訓練と課題が残されていたのだ。そんな2人のもとに、バトラーがやってくる。『2人に話しがある、外の空気でも吸いながらどうだ?』バトラーに呼び出されたケンジと新田は、思いがけないクリスマスプレゼントを貰うこととなった。「君たちのミッションが正式に決定した」ケンジと新田は、人類初となる有人小惑星探査ミッションに挑むことになったのだ。『月よりさらに先に行ける』この朗報を伝えようと、さっそく妻・ユキに電話を入れるケンジ。電話口でユキも喜ぶが、その声が急に苦しそうな様子に変わった。どうやら、予定日より早く陣痛がきたらしいのだ。車を飛ばして病院に向うケンジ。しばらくして——赤ちゃんの泣き声が病室に響いた。生まれたのは、元気な女の子だった。産後直後にも関わらず、ミッションの事を聞きたいと言うユキに、資料を見せるケンジ。そこには、これから目指す小惑星の名称が書かれていた。小惑星の名称は「314225AN41」。偶然にも、以前風佳が希望した赤ちゃんの名前『あん』と、同じ名前を持つ小惑星。赤ちゃんの名前は『あん』に決まった。これからケンジは、小惑星を目指す宇宙飛行士であり、2人の娘の父として生きる。ケンジもまだ、生まれたばかりなのだ。
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第95話 我們的將來
温和なリーダー・エディが合流したことで、ようやくまとまり出したCES−62のバックアップクルー。その夜、デザートラッツ訓練場の施設の前では、たき火が焚かれていた。たき火を囲むのは、エディ、ベティ、フィリップ、カルロ、アンディ、六太の6人全員。火を囲んで話すと、人は嘘を付けなくなるらしい。自分の事、家族の事を正直に話せば、互いに親睦が深まるというエディの考えだった。六太が日々人のPD(パニック障害)と復帰試験の事を話し終わると、次はベティの番となった。実は8歳のクリスという息子がいる彼女。出産と育児のために、宇宙飛行士を退いていた時期があり、まだ宇宙に行ったことがないという。そして彼女の夫は、宇宙飛行士の故タック・ラベルだった。タック・ラベルは、CES—43クルーとしてブライアンと一緒に月へ向かい、帰還時の事故で帰らぬ人となってしまった。事故直後、ベティはもう自分は宇宙飛行士には戻らないと思っていた。だが、それから三年ほど経った今、クリスがまた宇宙に興味を持ち始めたらしい。「ねえママ。月から見た地球ってどんなかな?」ベティはそれを嬉しく思い、父親の代わりにその問いに答えようとしているのだ。翌日、正規クルーと合同した六太たちは、デザートラッツでの最後の訓練を始めようとしていた。現場にはピコ・ノートンがおり、自らが開発の指揮をとった『新型の月面着陸船』について説明した。訓練後、ピコは幼馴染であるビンスと酒を酌み交わしながら、少年時代にリックとした『約束』を語った。「いつか、リックが管制官になり、宇宙飛行士になったビンスに指示を送る。そのビンスは俺の作った、宇宙船に乗る——」リックはもういないが、もうすぐ夢が叶うところまで来たというピコ。なぜなら、ピコが作った船でビンスが月へ行った時、管制室から着陸の誘導をするのは、キャプコム担当の宇宙飛行士、『リックによく似た、六太』なのだから——。
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第94話 躍躍欲試的團隊合作
月への訓練のため、砂漠にあるラバフロー試験場でキャンプ生活をすることになった、六太たちCES—62のバックアップクルー。相変わらずまとまりがないメンバーは、朝のジョギングもバラバラで、食事も好き勝手に取っていた。仲が悪いというほどではないが、このままだとこのチームでミッションにアサインされることはないかもしれない。『このままではまずい』、さすがの六太もどうしたものかと思っていた。しかし、その不安はすぐ解消される。六人目のメンバー、ベテラン宇宙飛行士であるエディ・ジェイが到着したのだ。「リーダーつっても俺も月は初心者だ。君らと同じ。だから初めて月に立った時——その喜びも君らと同じだろう。ともに、月に立とう」六太にも一瞬でわかるほど、エディは『安心と興奮を同時に与えられるようなリーダー』だった。エディがリーダーとなってから、チームの雰囲気が変わっていった。まず食事は簡易食品ではなく、メンバーが交代で作るようになったのだ。しかし最初の当番はベティ。一週間分のコショウが入ったまずい料理だった。そしてさらに、エディは朝のジョギングも趣向を変えるという。その説明のため、前の晩からリハーサルを始めようとしていた。「キャンプのまわりをぐるぐる回るのをやめるんだ。もっとワクワクするやり方がある」まず6人全員が車に乗って、キャンプ地から数キロ離れたどこだかわからない場所で降ろされた。そこからジョギングを開始し、キャンプに向かって決められた時刻ちょうどに着くように走るというもの。到着は目標時間より早すぎても遅すぎてもダメ。時計を持っていいのはリーダーのエディだけなので、メンバーはエディにくっついていくしかなかった。始めて並んでジョギングする一同。「どしたぁみんなぁ。もっといつもみたいにバラバラに走ってもいいんだぜ?」これまでバラバラだったチームは、エディのおかげで、確実にまとまり始めていた。
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第93話 在內心的角落
六太がCES—62のバックアップクルーとして新しい訓練を始めた頃、NASAの会議室では、天文チームによるプレゼンテーションが行われていた。その内容は、『シャロンが考えた、新しい月面望遠鏡案』。天文学者・モリソンらの協力もあり、この新案は、これまでの問題点を全てクリアした素晴らしいものだった。前案を却下したNASAも、新案には賛同してくれ、実現を前向きに検討してくれることになった。シャロンは『天文学とこの企画に熱意を持ってくれる宇宙飛行士』に六太の名前をあげ、バトラー室長も六太の名前を心の片隅にとどめておくと約束した。会議後、バトラーは宇宙飛行士であるエディ・ジェイの部屋を訪ねていた。エディはブライアンの兄で、ISSに計700日滞在した宇宙飛行士の強者である。その彼に、『CES—62のバックアップクルーのリーダーになって月を目指して欲しい』と直談判しにきたのだ。だがエディは、なかなか了承してはくれない。ISSのことならどんな事でも知っているが、月は初めて行くので、一から訓練を始める気力はない、と断ったのだ。しかしバトラーは諦めず、エディに封筒を渡した。その中には、CES—51の事故の時、日々人が偶然月面で『宇宙飛行士の人形』を発見した際の写真が入っていた。「エディには月で本物を見てもらいたい。月面であんたを待ってるかのような——ブライアンの置きみやげだ」エディとブライアンは、兄弟で月面に立つという夢を抱いていた。そして子どもの頃買った2体の宇宙飛行士の人形を、一緒に月面に並べようと約束していたのだ。しかしエディは、前の室長の理解が得られず、ずっと月面の訓練を受けられないままでいた。その間にブライアンは事故で亡くなってしまい、約束は果たせていなかったのだ。半ば引退を考えていた矢先に、ブライアンの想いが詰まった写真を見せられたエディ。人生最後に『月を目指す』決意をしたのだった。
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第92話 孤獨的他們
次に月へ行く日本人に選ばれた六太は、『控え』の経験を積むため、CES—62のバックアップクルーとしてデザートラッツ訓練を始めようとしていた。六太と同じバックアップクルーに選ばれたのは、NEEMO訓練で一緒だった、一際背の高い大男——アンディ・タイラー。大耳にピアスを付けたドレッドヘアの男——フィリップ・ルイス。黒のハットを被り、黒のジャケットを着込んだ優男——カルロ・グレコ。パーマのかかった黒髪を一つに纏めた女性——ベティ・レインの四人。六太と共にこれから厳しい訓練をこなしていく彼らは、そのまま一緒に宇宙へ行くメンバーでもあるらしい。まだ互いの事をよく知らぬまま、訓練教官である地質学者のジョージ・マグワイアから説明を受け、砂漠に作られた『アリゾナ州北部ブラックポイント・ラバーフロー試験場』に来た六太たち。初日の訓練は、ビートルの運転と、宇宙服を着ることだったが、訓練が開始されてもバックアップクルーのメンバーにはまとまりがない。それもそのはず、実は六太以外の四人は、宇宙飛行士たちの中では『はみ出し者』だったのだ。アンディは、無口と巨体が醸し出す異様な雰囲気のせいで怖がられ、ベティは、強い態度と物言いがまるで、バリアでも張っているかのようで近寄りがたい。カルロは、気取った言動に嫌気が差した周囲から疎ましがられ、フィリップは、ムダに陽気で騒がしいノリに、誰もついていけない。残念ながら、本心から彼らと共に宇宙へ行きたがる者はいないらしい。そんな『孤独ではあるが優秀な彼ら』を宇宙へ向かわせるため、バトラーが考え抜いた結果が、六太を投入することだった。これまでミラクルを起こし続けてきた六太の『可能性』にかけたのだ。そしてバックアップクルーには、あと一名追加される予定だった。頼れるリーダーさえいれば、チームはまとまるはずである。そんな一癖も二癖もある連中をまとめられる人物とは一体——誰?
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第91話 拯救日日人的方法
NBLのプールでは、日々人がPD(パニック障害)を克服したと証明する、復帰試験が行われていた。シャロンの励ましの言葉や、六太との約束、プリティ・ドッグの手鏡を支えに、最初は順調に水中での作業をこなし、船外服を着た状態でも平常を保っていた日々人。このまま合格か——と思われたが、ゲイツがわざと試験を中断に追い込むようなグリーンカード(極秘指令)を出したことにより、事態は一変する。『二酸化炭素の上昇』という警告表示に、月での遭難を思い出した日々人は、心拍数を上昇させてしまったのだ。このままでは試験中止もありえる——、誰もが不安を過らせたその時、プールサイドに現れたのは、かつて日々人と一緒に月面に降り立った仲間、バディとカレンだった。六太から事情を聞き、日々人の手助けをしようと駆けつけてくれたのだ。そしてさらに、日々人の頭上では、水中ゴンドラから降りてくる船外服を着た人物がいた。それは、月面で日々人が命を助けた、ダミアンだった。「船外活動は基本的にパートナーと、二人でやるもんだ」もっとも幸せだった時間を一緒に過ごした仲間の登場で、日々人の不安は完全に打ち消されていた。その後も試験は続行され、日々人はダミアンと共に、バディとカレンの指示で、的確に作業を進めることができた。日々人の心拍数は少し上昇したが、それは発作を予感させるものではなく、月にいた時と同様の、軽い興奮状態に安定していた。試験も終わりに差し掛かった頃、バックパックを背負った日々人は、ムーンジャンプと同じような姿勢で両手を広げ、高らかに水中をジャンプして、機材の上を跳び越えた。その姿を見た人々は、日々人がPDを克服し、完全に宇宙飛行士に戻ったことを確信した。結果、日々人は無事合格した。水中から上がり、船外服のメットを外した日々人は、大勢に囲まれて拍手を受ける。日々人のその表情は、月面に降り立った時のように、晴れやかだった。
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第90話 小小的留言條大大的護身符
六太が次に月へ行く日本人に決まり、ビンスの控えとして新しい訓練を始めた頃、日々人はPD(パニック障害)を克服できたか確かめるための、復帰試験を受けようとしていた。NASAの幹部たちが目を光らせる中、プールサイドで運命の時を待っていた日々人は、事前に六太から渡された『お守り』を見つめる。そのお守りとは、プリティ・ドッグの手鏡だった。手鏡は三面鏡になっており、肉球を押すとパカッと鏡が開く仕掛けになっていた。そしてそこには、六太からの小さなメッセージカードが入っていたのだ。『調べてみたところ、PDの発作対策として、自分を客観視するといいらしい』『客観視』という言葉に、日々人は子供の頃、六太と発見した出来事を思い出す。三面鏡で自分を見ると、誰かの目で見ているように感じられたのだ。この手鏡は、日々人にとってもってこいのお守りだった。ついに入水の時——。宇宙服を着た日々人は、管制官の指示でプールの中に沈んでいた。底に着いても発作はなく、出だしはうまくいったようだった。しかし、問題はこの後。日々人は試験中ずっと監視され、ダイバーたちに囲まれ、動きづらい宇宙服の閉塞感の中、薄暗い水中で作業をするのである。今の日々人は、いつ発作が起きてもおかしくない状況だった。そして、突然日々人の耳元で警報が鳴る。トラブルが起きたと思わせるグリーンカードで、日々人のヘルメットのディスプレイに、『二酸化炭素濃度が上昇中』と表示されたのだ。トラブルを見越していた日々人は、慌てず正しい処理をする。だが、なぜか警報が消えない。実はさらに、NASA幹部・ゲイツによって、スタッフにも知らされていない、極秘の危険演出が行われていたのだ。鳴りやまぬ警報の中、平静を保とうと、努めてなにもないよう振舞う日々人。『来んじゃねーぞ! PD野郎!』焦りの中でふと腕を見ると、その視線の先には、六太に貰ったお守り『PDの手鏡』があり——?
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第89話 最後的話語
日々人から自分がPD(パニック障害)だと告白された翌日、六太は寝不足だった。家に帰ってからも気になってしまい、PDのことをネットで調べたり、あれこれ考えているうちに朝がきてしまったのだ。『日々人なら楽勝で試験に合格できるはず』そう信じつつも、六太は心配していた。新しい訓練が始まる日——。NEEMO訓練で高い評価を得て、次に月へ行く日本人に選ばれた六太は、先輩宇宙飛行士・ビンス(ビンセント・ボールド)と行動を共にしていた。実際に月へ行く前に、『控え』の経験を積むため、ビンスのバックアップクルーに任命されたのだ。これからビンスとは一蓮托生、二人三脚で宇宙を目指す。にも関わらず、寝不足でフラフラな六太にビンスが言及する。「ミスター、ナンバ。これから君は、私と同じマニュアル書を読み、同じ船室の空気を吸い、同じシートに座り、同じ訓練を受けるんです。私のリズムについて来られるようにして下さい。それが、私のバックアップクルーに選ばれた者のつとめです」その頃、ケンジと新田は——。六太が選ばれたことをバトラーから聞いた2人は、もう自分たちが『月へは行けない』と自覚していた。これまでの月の訓練はなんだったのか、六太が選ばれたことに不服はなかったが、今後自分たちがどうなっていくのか、不安になっていた。そんな矢先、2人に新たな訓練を始めるよう、辞令がでる。それは、無重力環境訓練施設で、船外無重量訓練をするというもの。その意味は、『ISSへ行くための訓練をしろ』ということだった。新たな希望を与えられたケンジと新田は、新しい道を進み始める。宇宙飛行士をやめない限り、宇宙へはきっと行けるのだ。日々人、復帰試験の日——。プールサイドから、NASAの幹部達、バトラー、ローリーやオリビアが見守る中、ついに試験が開始されようとしていた。日々人の顔は自信に満ちているが、果たして無事乗り切ることができるのか——?
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第88話 靚狗狗
バトラー室長に頼み、PD(パニック障害)を克服したと証明する、『復帰試験』を受けることになった日々人。だが、試験への気合は十分だったが、失敗したら二度と宇宙へは行くことができない。そのため、不安を感じていた。その不安を少しでも和らげようと、亡きブライアンの墓参りをする日々人。彼の生前、何かに悩んだ時に問いかけると必ず答えが返ってきた。日々人はその存在を今でも頼ってきたのだ。『NASAの上官たちの見てる前で、もし発作が出てしまったら——。あんたなら……どうするブライアン……』この日はブライアンの命日だったため、墓地には吾妻もきていた。悩み苦しんでいる日々人に、吾妻は一つアドバイスをする。『ヒビトも壁にぶち当たったときは、俺たちの兄貴に話しかければいい。それでもダメなら、本当の兄貴に話せばいい。お前にはいるだろ——もう一人の兄貴が』日々人の心の中にいるブライアンも、兄・六太に相談しろと言っているようだった。その夜、日々人は六太を呼び出し、いま自分がPDで、前線から外されていることを告白した。さらに日々人は、来週には復帰試験をするというのに、ここへ来る時、タクシーで見た悪夢が原因で、また発作が出てしまったことを話す。予想以上に深刻な相談を受けた六太だったが、弟・日々人の悩みを受け止めようとしていた。そして、今後また発作が出そうになったらこうつぶやけとアドバイスをする。『来たなこのPD野郎、プリティ・ドッグめ』そうすれば、いやでもプリティ・ドッグに似たアポの顔を思い出せるからだ。帰り際、六太は日々人に、『タクシーの中で発作が起きて安心した』と伝えた。それは、宇宙服を着ているかどうかは発作と関係ないということが証明されたからだった。憧れ続けた宇宙服が原因であるはずがない。宇宙服は六太たちの味方なのだ。日々人にとってPDの意味はパニック障害ではなく、プリティ・ドッグに変わっていた。
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第87話 回到自己的所在之處
PD(パニック障害)を克服するため、極秘でリハビリを続けていた日々人は、その夜、イヴァンに送って貰った『オリガの成長記録ボリューム・ツー』を観ていた。映像の中のオリガは11歳。上手くなったオリガのバレエに、日々人も喜びを感じていた。だが突然、映像の雰囲気が変わる。オリガは右足首を押さえ、苦痛の顔で床に蹲ってしまったのだ。その事故から5日目——。怪我で動けないオリガは、バレエ以外のことがしたいと、諦めモードになっていた。怪我はおそらく一ヶ月ほどで治る程度のものだったが、結局、11歳のオリガは、怪我以降一度も踊らなかった。オリガが12歳になった頃、宇宙へ飛び立っていたイヴァンは、バレエを諦めてしまった娘を想い、ISSからメッセージを伝えた。オリガに、本当に好きだったことは何か、やりたいことは何か、思い出して欲しかったのだ。その中継で、なんとイヴァンは、ISSの無重力空間でクルクルとピルエットの姿勢で回り始めた。「ほ~~うら! 見てるかぁ、オリガ?」その楽しげな父の様子に、オリガはバレエの楽しさを思い出す。そして、再びバレエを始めたのだ——。オリガの映像に励まされ、勇気をもらった日々人は、レベル10の訓練をやってのけた。残るは本物の船外宇宙服だが、勝手に持ち出すのは不可能だった。日々人は、PDを克服したことを直接見てもらうしかないと思い、バトラー室長に、宇宙飛行士に戻るための試験をやってもらう事を頼む。「宇宙飛行士に——戻る準備ができました」その後日、ブライアンの命日——。墓参りに来ていた日々人は、亡きブライアンに今の気持ちを相談していた。試験への気合は十分だが、失敗したら二度と宇宙へは行かせてもらえないため、不安になっていたのだ。「あんたなら……。どうする、ブライアン……」その時、後ろから声がした。「よう、お前もか、日々人」ハッと振り向いた日々人、その前に立っていたのは、吾妻で——?
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第86話 為了明天
NEEMO訓練の最中、シャロンから『月面望遠鏡計画が中止になった』と聞かされた六太は、今は実現不可能と気持ちを切り替え、自分が出した月面望遠鏡制作案を取り下げた。だが、そのかわりに出した六太の案『ソーラーミラーシステム』は、ケンジやバトラー室長、NASAの幹部たちまでも、驚かせることとなった。『ソーラーミラーシステム』とは、鏡の反射を使って、窓のない基地に太陽の光を取り入れる、照明装置である。宇宙飛行士は、月面生活のほとんどを基地の中で過ごす。そのため、月面でもし節電を余儀なくされた場合、窓のない月面基地では、部屋も気持ちも暗くなってしまう。そのことに気付いた六太は、『設備を追加するなら中を改善したい』と考えたのだ。NASAの幹部たちは、『自分が本当に月面にいるつもりでなければ思いつかないアイデア』を出したとして、六太を高く評価した。一方、PD(パニック障害)に苦しむ日々人は、安全スーパーバイザーとして危機管理運営会議に参加していた。しかしその会議内容は、宇宙飛行士の仕事とは関係ないものばかり。だが日々人は宇宙を諦めず、会議後もこっそりバックヤードにこもり、極秘のリハビリ訓練を続けていた。現在の訓練レベルは9。レベル10の本物の与圧服をクリアすれば、最後に船外活動用宇宙服を着ることとなる。その訓練が上手くいけば、日々人は完全復帰できるのだ。その夜——。日々人は、イヴァンから送られてきた『オリガの成長記録ボリュームツー』のDVDを観ようとしていた。映像にはバレエの練習している11歳のオリガが映っており、先生からも上手になったと褒められていた。その順調さを感じ、笑みをこぼす日々人。その傍らではアポも「へっへっへっ」と見ており、和やかな空気が漂っていた。しかし、映像の雰囲気が一変する。撮影していたイヴァンが、突然叫んだのだ。「オリガ! 大丈夫かオリガ!」オリガの身に何が——!?
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第85話 在月球表面
NEEMO訓練も9日目を迎え、ようやく六太たちが注文していた資材が届く。しかしその中に、六太には覚えのない『水の入ったボール』があった。それは、ケンジが六太を見習って、時間削減のために注文したもの。復活したケンジのやる気もあり、六太たちは最初の計画通り、大容量通信アンテナ、ローバーなどの充電ポスト、シャロンの月面望遠鏡の3つを制作することにする。やる気に満ちたケンジは、常に時間短縮、作業の効率化に結び付くアイデアを出し続ける。さらに呪文のように『スーパンダマン』言葉を発してはニヤけていた。それでも本当は、ケンジも六太と同じ気持ちだった。忘れたわけじゃない。思い出さないようにしているだけなのだ。どちらか一人だけが、月にいけるということを。ケンジと共に力を出し合った時こそ、いろんな事がうまくいく。どういう結果になっても、2人は最高のパートナーだ。しかしその夜、シャロンからとても辛い、悲しい報告が入る。月面望遠鏡を月で建設するという案は問題点を多数指摘され、NASAの協議の結果、不採用となってしまったというのだ。この報告を聞き、六太は電力不足で暗くなっているアクエリアス内で、さらに心をどんよりさせていた。それでも、余った時間を無駄にしないために、別の設備を考えようとするが——?NEEMO訓練も終盤にさしかかった頃——。六太のもとに、シャロンから連絡がくる。いまは仲間と協力し、新たな月面望遠鏡の建設案を考えている最中で、次こそNASAに認められるものを目指して、シャロンは諦めないという。『It's a piece of cake!』NEEMO訓練完了後——。NASAの会議室では、訓練成果を検討していた。中でも注目されていたのは、六太が訓練終了間際に出した新設備案だという。「ナンバ・ムッタは、この2週間、他の誰よりも月面にいた——」土壇場で出したにも関わらず、見事だと評価された、六太の新設備案とは——?
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第84話 超級熊貓人
訓練3日目の午後、一度は諦めると言った大容量アンテナやシャロンの月面望遠鏡を、やっぱり作ろうと言い出した六太。しかし先輩飛行士のラブは、その意見を却下する。今後はSEV(海上ローバー)の運転訓練なども増えるため、 時間内には無理だと判断したのだ。しかし六太は諦めず、海中に停めてあったSEVから、時間問題を解決する新しい案を閃く。そしてそれをすぐに、アンディに相談した。「アンディの有り余ってるパワーがあれば……可能かな?」NEEMO7日目——。六太の新しい案は、アンディのおかげで順調に作業を進め、ほぼ完成することができた。それは、SEVの荷台に搭載する新しい荷台だった。実はこれまで、資材は海中にある資材置き場から、手押し車に積んで運んできていた。そのため六太は、積んで戻ってくるだけで2時間近くかかった運搬作業を、SEVの荷台で大幅に短縮しようという。しかもSEVにロボットアームを取り付けるため、4人は組み立て作業に集中でき、運搬はハミルトンに任せられることまで考えられていた。NEEMO8日目——。ハミルトンが資材を運んできてくれるおかげで運搬作業がなくなり、基地制作に集中できるようになった六太たち。人材も機材もフル活用することができ、管制からの評価も上がっているようだった。しかし、ケンジは悩んでいた。六太が時間を作ろうと必死だった時、自分が選ばれることだけを思っていたからだ。これから何を考えていけばいいのか、わからなくなっていた。そこでケンジは、六太と話すことを決めた。アンディに話しを聞いて、先のことを考えることをやめ、今を大事に考えることにしたという六太。六太の無理なことに挑戦していきたいという考えに、ケンジは、自分の娘・風佳が思い描いたヒーロー・スーパンダマンの姿を思い出していた。ケンジを励まし見送ってくれた風佳のためにも、ケンジは無理して頑張るヒーローになることを決意した。
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第83話 我和賢治
NEEMO訓練3日目——。六太たちには、重い試練がのしかかっていた。それは、自分とケンジの二人のうち、月に行けるのは、どちらか一人だけという事実だった。互いを最高のパートナーだと思っていただけに、ショックを隠せない六太とケンジ。六太はシャロンのため、ケンジは家族のため、これまで辛い訓練も互いに励まし合い、頑張ってきた。これからどう接していけばよいのか、なかなか答えをだせないまま、相手の差し伸べた手も掴むことができず、すれ違うようになってしまった。応援してくれる家族のためにも、六太と競うことを決意したケンジは、今回出した3つの案で、必要なものと、そうでないものを考え直すことにした。その結果、少ない時間でより良いものを作るため、大容量の通信アンテナと、六太が切望していたシャロンの月面望遠鏡を、建設しないことを提案する。ケンジの指摘通り、限られた時間ではいくつも施設を作ることは厳しい。六太は反対意見を出すことができず、肯定してしまう。船外活動中、ガゼボでアンディと一緒になった六太は、『選ばれなかった方は、この先ずっと月へは行けないのか』と聞いた。アンディから返事は『いつ誰を何のミッションに任命するかなんてことは、誰にも分からない』ということだった。事実アンディ自身も、なかなかアサインされず、随分待たされたという。同期の仲間がどんどん先に選ばれる中、なぜ自分だけ選ばれないのか、考え、苦しんだ時期もあったらしい。そんな辛い時期、アンディは考えるのをやめ、いま目の前にある訓練や仕事をさらに増やして、それで頭をいっぱいにしたという。アンディの言葉を受け、ようやく自分の信念を取り戻した六太は、皆の大容量通信アンテナも、月面望遠鏡も本当は必要だと思っていることを伝えた。「時間内でどこまで作れるのか、みんなであがいてみませんか」自分たち宇宙飛行士は、宇宙へ行けるかわりに、誰かの願いに応えないといけないのだ。
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第82話 宇宙家族
NEEMO訓練2日目——。地球上でもっとも月面を再現できる場所で、月の訓練をすることになった六太たち。最終日を除く12日間でやる課題は、『三分の一スケールの月面基地、および周辺設備のモデルを船外に建設すること』、そして『各チームの新人飛行士2人が、基地の新しい設備などのアイデアを出し合い、先輩飛行士2人が採用案を検討すること』だった。新人である六太とケンジは、さっそく互いの意見を出し合い、新しい施設案を検討する。2人とも、いま実在している月面基地を発展させる方向でいくことで意見が一致し、将来的に実現可能な基地の設備を考えることに決めた。そして、大容量通信アンテナ、ローバーなどの充電ポスト、シャロンの月面望遠鏡など、互いを尊重しながら、次々とその内容を決めていく。意見をぶつけることもないため、サクサク決まり、どんどん進む。互いに最高のパートナーと感じており、このコンビで月に行けたら楽しいだろうなと思っていた。しかし、そんな六太とケンジのコンビの状況に、先輩飛行士たちは危機を感じていた。船外活動中にも関わらず、アンディから作戦会議ができるガゼボ(酸素補給場所)に呼ばれた六太とケンジ。そして集合した六太とケンジに、アンディからとても信じたくない発表があった。「お前ら二人のうち、月に行けるのは、どちらか一人だけだ」この決定事項を伝えた理由は、事実を知って競合させれば、必死になり集中力も高まり、チーム全員のメリットになると判断したからだった。これからは、六太とケンジは協力し合って課題に取り組むのではなく、互いにライバルとして接しろ、ということなのだ。この事実を聞き、六太は驚愕の顔でケンジを見る。視線の先のケンジは六太を見ず、ただ茫然自失でうつむいていた。お互いを最高のパートナーと感じていただけに、ショックを隠せずにいたのだ。それを見た六太は、思わずケンジから顔を逸らしてしまい——…?
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第81話 最大的敵人
月面ローバーの改良案が評価された六太と、ケンジ、新田を含む12名の飛行士たちは、憧れの月を目指すため、過酷な訓練を始めようとしていた。それは、通称・NEEMO訓練(NASA極限環境ミッション運用訓練)というもので、海底に造られた仮想月面基地で、約2週間のシミュレーション生活を送るのだ。フロリダの海底20メートルの深さに設置されたNEEMOの施設は、地球上でもっとも月面を再現できる場所だった。居住施設は全部で3つあり、六太は2つ目の施設・AQII(アクエリアス・ツー)に、ケンジと一緒に入ることに決まった。ダイビングスーツで潜水し、六太とケンジが海底施設に入ると、そこにはすでに、2名のベテラン宇宙飛行士と、1名のダイバーが待っていた。リーダーのジョージ・ラブ(宇宙飛行士)と、巨大な身体を持つアンディ・タイラー(宇宙飛行士)、そして海が大好きなハミルトン(技術支援・ダイバー)である。NEEMO訓練1日目——。一息ついたところで、ジョンソンスペースセンター・NEEMO管制室から初日の訓練内容が知らされた。それは船外(海底)に出て、月の重力を仮想体験するというものだった。ラブの先導で、特殊な潜水服を着込んだ六太は、さっそく船外活動に勤しんでいた。自分の重さを調節しながら、月面を想定して動くのだ。最初はなかなか慣れない六太だったが、ケンジに励まされ、協力しながら、楽しい訓練初日を終えることができた。船内に戻ると、ラブが今後の訓練内容について話し始めた。今後は船外活動が2割、残りの8割は同時に訓練をしている他2チームと競い合う形式になるらしい。チームの評価はそのまま月ミッションのアサイン順につながる可能性が高く、他のチームには負けられないという。六太は最強の味方・ケンジがいるから大丈夫、と自信満々の顔。そしてNEEMO訓練2日目——。地上の管制室から通信が入り、課題の内容が発表され——!?
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第80話 秘密
月面バギー開発で見事成果を出すことができた六太は、先輩宇宙飛行士・ビンスに連れられ、新たな訓練の説明会場へと来ていた。その会場にはすでにケンジや新田など、何人もの飛行士たちが集まっていた。そして、12名の飛行士たちが揃ったところで、バトラー室長から訓練内容が発表される。六太たちはこれより数日後から約2週間、NEEMO(ニーモ)で実践訓練をするというのだ。NEEMOとは、海の底、水深20メートルに設置された、仮想月面基地の名称である。そこでのシミュレーション生活は死の危険も伴うため油断はできない。だが、地球上で最も月面を再現できるため、六太にとっては憧れの場所だったのだ。NEEMOまで、あと2日——。六太はロシアから帰国した日々人と、朝食を食べながら近況報告をしていた。「やっと自分も月へ行くための第一段階に立てた」と喜ぶ六太を前に——日々人の顔はどうにも浮かない。怪しむ六太だが、まさか日々人がパニック障害で、さらには安全スーパーバイザーに任命されたことなど、思いもしないようだった。日々人も、このことは六太には隠し通す気のようで——?そして——。六太はケンジらと共に、2週間の月面シミュレーション生活へと突入。一方、日々人は——。安全スーパーバイザーに着任し、与えられた立派なデスクを前に、唇を噛みしめていた。『一人でもリハビリ訓練をしないと……』日々人が思案を巡らせていた丁度その時、ローリーが台車を押して入ってきた。「なんか君宛にものすごい荷物が届いたよ?」台車の上には大きなダンボールがあり、送付状はロシア語で書かれていた。なんとイヴァンが、日々人を思って、集めたコスプレ訓練用の衣装を送ってくれたのだ。決意の表情でヘルメットを手に取る日々人。「なあ……ローリー……秘密……守れるか?」どうやら日々人は、ローリーも巻き込み、現状を打破するため秘密の訓練を決行するようで——?
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第79話 奧莉嘉與日日人與加加林
月での事故がきっかけで、パニック障害となってしまった日々人。ロシアで極秘にリハビリ訓練をしていたところ、JAXAから突然の帰国命令が届く。リハビリに時間がかかっているという理由で、『安全スーパーバイザー』として働くよう、辞令されてしまったのだ。このことは、日々人を指導していたイヴァンにも遺憾だった。イヴァンはどうしても、日々人を治してやりたかったからである。実は宇宙飛行士だったイヴァンの父親も、日々人と同じパニック障害だったのだ。だが意義を申し立てたくても、ロシア人の彼に、日本人の日々人の処遇は変えられない。悔しい気持ちを抑え込む日々人に、イヴァンは言う。『今は耐えるしかない。辛抱強く、復帰することだけを考え続けろ——』と。その夜——。帰国のため荷物をまとめていた日々人の部屋に、思わぬ来客があった。それは、泣きはらした顔のオリガだった。日々人の処遇を聞いたオリガは、居ても立ってもいられず会いに来てしまったのだ。「これ……あげる」オリガが差し出したのは、日々人が観たがっていた、『オリガのダンスの成長記録』の続き。たまに観て、自分のことを思い出して欲しいというオリガの願いのようだった。オリガを家まで送る道すがら——。通りかかった公園で、オリガは自分より背の高い、ガガーリン像を片手で示した。ユーリ・ガガーリンとは、世界発の有人宇宙飛行を成功させた、ロシアの宇宙飛行士である。オリガは、イヴァンに聞いたというガガーリンの豆知識を披露。しかし最後までは話さず、「続きは次回、日々人がまたロシアに来た時に」と笑顔を浮かべた。そして、オリガとの別れの時——。「じゃね! イエーイ!」ヒビットの決め台詞を言いながら、みるみる遠ざかっていくオリガ。彼女を最後まで見送った日々人は、自信が持てない自分を悔やんでいた。『パニック障害を治したら……今度は堂々と、またロシアに来る——また会いにくるよ、オリガ——』
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第78話 時限到了
『見えない踏ん張り』を続けてきたオリガは、舞台の上で美しく、まるで無重量空間にでもいるように軽やかだった。公演後、日々人はオリガに、自分がパニック障害を治しに来たことを打ち明ける。「日々人ならすぐ治る」と明るいオリガに励まされた日々人は、その帰り道、彼女が欲しがっていた新品のブーツをプレゼントした。翌日、訓練へ復帰した日々人は、オリガの成長記録の続きを貸してくれるよう、イヴァンに頼んでいた。しかし、貸せない理由があるらしい。「実はボリューム・ワンを、黙ってお前に見せたことがオリガにバレてな……超怒られた」そう言いながら、イヴァンは持っていたサングラスを日々人にかけさせ、そのまま施設内を歩かせる。理由もわからず歩き続けると——やがて拍手の音が聞こえ、職員たちが日々人に歩み寄ってきた。「おめでとう。レベル1合格だ」サングラスをかけた日々人は、知らぬ間に、先日、与圧服を着て歩けなかった距離を歩ききったのである。これは、コスプレをしながら徐々に宇宙服への恐怖を和らげていこう、という訓練。思わず笑顔がこぼれるその内容に、日々人はその日、レベル5まで問題なくクリアすることができた。「大事なのは、『できる』という経験を得ること。楽しみながら克服しようではないか。パニック障害など!」一方、ヒューストンでは——。ゲイツが日々人のパニック障害のことを知ってしまい、その処遇をJAXAに求めていた。理由は、NASAの精神心理担当医が、もう日々人は宇宙へ飛ぶことは不可能だと判断したからだった。非情にもJAXAの職員・田沼は、日々人を『安全スーパーバイザー』にすることを提案した。それはあたかも功績に見合った、立派なポジションに抜擢するかのような辞令だった。だが実際、日々人はそのポジションを得て、宇宙への活躍の場を失うことになる。それは、『仕事をさせず、日々人を飼い殺し状態にする』と同じことで——……?
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第77話 宇航員的女兒
与圧服を着ただけで、たった10メートルの距離も歩けなくなってしまった日々人。自分は宇宙飛行士失格だと感じ、リハビリ訓練も、2日続けてサボってしまっていた。『これからどうしたらいい……』途方に暮れていると、イヴァンから一通のメールを受信する。『今夜飲みにつき合え——、一人になるな』その夜、とても陽気に飲む気分ではなかったが、なんとか待ち合わせの場所へ来た日々人。早くもイヴァンは飲んでおり、「頼みがある」と、映像データーが入ったDVD『オリガの成長記録1』と、ビデオカメラを日々人に手渡した。なんでも、明日ダンスコンクールがあり、オリガが出演するという。自分は訓練と重なって行けないため、日々人にオリガを撮影してきて欲しいというのだ。そして、イヴァンは落ち込む日々人に一本の道を示した。「できることから習慣づけろ——まずは私と酒を飲め!」ほろ酔いで帰宅した日々人は、早速オリガの映像を観ていた。画面の中のオリガは、何度やってもうまく踊れず、すぐにいじけては怒られていた。明らかにまわりの子の方がうまい状況に、オリガにバレエは向いてないんじゃないかとさえ思えてしまうほどだった。しかし、オリガの夢は今もダンサー。このあと彼女は、どうやってこんな辛い練習を続けられたんだろうか——?公演当日——。ビデオカメラを片手に、日々人は劇場へ来ていた。大勢の観客の中、やがて幕が開くと——星空の下で子どもたちが踊り——主役が登場する。驚くことに、主役はオリガだった。舞台を観ながら、日々人は練習を嫌がる子どもの頃のオリガを思い出していた。もっと楽な方がいいと言うオリガに、母・エミーリアは言う。『人に見られることをするには、見えない踏ん張りが必要なの。苦しくて苦しくて大変な演技ほど、美しく見えるの』舞台のオリガは美しく、完璧なアラベスクをキメていた。それは、辛い練習から逃げず、見えない踏ん張りを続けた、確かな証のようだった——。
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第76話 奧莉嘉
月での事故が原因で、宇宙服を着て緊張状態に置かれると、発作に襲われるようになってしまった日々人。このままでは宇宙での船外活動ができず、希望する月ミッションには加われない。そのため日々人は、兄・六太には病状を伏せたまま、かつての自分を取り戻すべく、極寒の地・ロシアへと向かった。そこで待っていたのは、日々人のことをヒビチョフと呼ぶ、宇宙飛行士・イヴァン・トルストイだった。ロシアの英雄でもあるイヴァンの家に招待された日々人は、彼の妻・エミーリアや、その友人たちに囲まれ、酒を飲み交わし、楽しい時を過ごす。「心の健康のためには、ある程度の酒は必要なのだ!」酒好きのイヴァンは上機嫌だ。しばらくすると、そこにイヴァンの娘・オリガ(15歳)が帰宅した。そっけない挨拶をし、まるで日々人に感心がないかのように去っていくオリガ——だったが、彼女の頬には緊張の汗が流れていた。「バヤイ……」実はオリガは、アニメ『Mr.ヒビット』のモデルになった日々人の、大ファンだったのだ。数日後——。いよいよ日々人は、ロシアの宇宙センターで、訓練を始めることになった。最初の訓練は、『与圧服を着た状態で、10メートル歩く』、というだけのもの。しかし日々人は、その状態で一歩も歩くことができない。日々人の脳内では、月面で遭難し、酸素がなく苦しんだ時のことがフラッシュバックされてしまっていたからだ。耐えきれず、力なく倒れる日々人……その顔は、蒼白だった——。日々人の症状は、ヒューストンにいた頃よりも悪化していた。環境を変えれば、変われると思っていただけに、ショックは大きい。「失敗の回数が増えれば増えるほど……俺は、宇宙飛行士じゃなくなっていく気がする——」アニメのヒビットとは違い、今の日々人には勇気と元気がない。思い詰めた日々人は、これ以上病状を重くしたくないと、指導教官であるイヴァンに、訓練の内容変更を申し込むが——…?
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第75話 我的雙手
月の訓練への道を開くには、バトラー室長に認めてもらうしかない。そう感じた六太は、先輩アレックスとT-38に乗り込み、魔法の裏技を披露しようとしていた。魔法の裏技とは、見る者にはロケットの打ち上げのようにも感じられる、バーティカルクライムロールというアクロバット技のこと。六太はバトラーの前でこの技を見せることこそが、宇宙への近道だと思ったのだ。18時30分ちょうど、六太の魔法の裏技は、バトラーにも見える位置で見事に成功した。だが、六太の計画はこれで終わりではなかった。その3分後、さらに六太は、2つ目のアクロバット技を決行しようとしていたのだ。実は六太は、バトラーだけでなく、せりかにもメールを送っていた。その内容は、『今日の訓練でエーリントンに着いたら、18時33分に空を見てほしい』というもの。以前、六太の飛行の師匠・デニールは言っていた。『空にハートマークでも描けりゃ一流だ。意中の女にでも見せてみろ。イチコロだぞ……ウハハッ』六太はせりかにハートマークの軌跡を見せて、告白しようとしていたのだ。しかし残念なことに、せりかのいるシャトルバス側から見えたものは、ハートマークではなく、バルタン星人のハサミ型だった。そしてハートマークに見える位置から空を見上げていたのは、なんとバトラーだった。自分が告白されたと思い赤面し、愕然と空を見上げているバトラー。その様子は、明らかに動揺していた。「ミスタームッタ……それは……マズイでしょ……」一方、日本にいるシャロンは、来日したモリソン博士たちに、月面望遠鏡の計画を引き継いでもらおうとしていた。自分の手が思うように動かないこと、もう話せなくなることを受け入れ、準備していたのだ。魔法の裏技から数日後――。六太はNASAの技術者たちと、フロントウィンドウの試作品を完成させていた。そこに、ビンスが早足でやってくると、六太にとって新たな目標を告げ――?
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第74話 魔法秘技
六太が提案した『フロントナビシステムを利用した月面ナビ』は、NASAの役員満場一致のもと、実装が決定されようとしていた。これでようやく六太も月の訓練に参加できる、と思いきや――バトラー室長だけは、六太を参加させるか否か迷っていた。それは、パニック障害に苦しむ日々人を思ってのことだった。バトラーが慎重になる理由は、20年以上前にNASAにいた宇宙飛行士、ロナルド・クーパーと日々人が似ていたからだった。ロナルドは、T―38の飛行訓練中に事故で死にかけ、その後パニック障害になってしまった。治療に励むも思うように成果が出せず、最後はNASAを去ったのだ。いま判断を焦れば、日々人も同じように宇宙飛行士を辞めてしまうかもしれない、バトラーはそれを心配していたのだ。一方六太は、飛行場で先輩宇宙飛行士であるアレックスに、『バーティカルクライムロール』というアクロバット技を教えてくれと頼んでいた。月の訓練への道を開くには、結局、バトラーに認めてもらうしかないと気づいたのだ。以前、バトラーは「自分を一人前のパイロットだと感じたのはいつか?」という問いに、こう答えていた。『バーティカルクライムロールを教官の前で披露したときだ』――と。バーティカルクライムロールとは、回転しながら急上昇していく、ド迫力のある技である。見る者にはロケットの打ち上げのようにも感じられるため、バトラーは己の出世欲、宇宙への憧れ、向上心、それらをストレートに伝える力が秘められていると感じ、宇宙への切符を勝ち取る魔法の裏技と思っていたのだ。六太はバトラーに自分の意志を認めて貰おうと、この魔法の裏技に挑戦するという。『18時半ちょうど――エーリントン上空を見てみてください』六太からメールを受け取ったバトラーは、食事の行きがけに上空を見た。そこには、上空を天に向かって急上昇していく、一機のT-38の『魔法の裏技』が見え――?
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第73話 在沒路的月球上鋪路
月での事故が原因で、宇宙飛行士として致命的な、パニック障害となってしまった日々人。その治療に専念するため、家族や、とくに六太には内緒で単身ロシアへと向かっていた。一方六太は、いままさに、バトラー室長と吾妻、NASAの役員たちに、『崖や谷に落ちない、月面バギーの改良案』のプレゼンを始めようとしていた。この案が通れば、六太も月の訓練に参加できるかもしれない。緊張した面持ちで提案したのは、「道なき月面に道を映し出す」という大胆な発想だった。以前、ミラクルカー社という自動車会社に勤めていた六太は、渋滞する日本の道路を改善しようと、『空飛ぶ車社会』という企画を進めていた。しかし、車は飛ばすことができても、道路は飛ばすことができない。そこで考えたのが、『それぞれの車のフロントガラスに、架空の共通道路を映す』というものだった。結局この企画は上司には現実味がないと却下されたが、六太の元後輩・技術チームの中川と糸井は諦めず、フロントガラスに道を映すことができる『カーナビ・フロントガラス』の研究を続けていた。そして現在、二人の頑張りが実り、すでにその技術はほぼ完成。これを応用すれば、月面ローバーのフロントウィンドウに道を映すことが容易にできるというのだ。さらに、六太の発表は続いた。JAXAに協力を要請したところ、『かぐやII』が観測した地形情報から作った、最新の月面3Dマップも提供してもらえるというのだ。この3Dマップは、月の35パーセントの範囲までであれば、クレーターの位置や深さまで、かなり詳細に閲覧することができるという。そのデータを使用すれば、月面ナビのプログラムがすぐできるのである。プレゼンを終えた六太の案は、開発予算まで考慮した、文句なしの内容だった。六太はさらに言葉を続ける。「JAXAの成果と、開発会社の技術、あと、NASAに熱意さえあれば、我々のこの案は、実現できます!」と――。
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第72話 日日人的障礙
月での遭難が原因で、パニック障害となってしまった日々人は、このことをシャロンにだけは話していた。『船外活動ができないうちは、月ミッションへの参加はできない――』『治るかどうか、わからない――』重い口調で話す日々人に、シャロンは微笑んだ。「治るわよ。ヒビトなんだから」シャロンの後押しを受け、心を少し軽くした日々人。治療のため、六太や家族には内緒で、単身ロシアへ赴こうとしていた。その頃、六太とNASAの技術者たちは、月面ローバーの改良案について相談していた。月でのハンドリングやブレーキを改善するためには、浮かないように車体を重くするしかない。だが月へ物を送るには、何百億円もの大金がかかるようなのだ。現実的には不可能な案しか出ない中、不意に六太が閃いた。解決できるかもしれない案を思いついたかもしれない――らしいのだ。すぐさま六太は、以前勤めていてクビになった、ミラクルカーコーポレーションに電話をかけた。昔自分が企画した『飛行自動車』と『フロントガラス』の設計を思い出し、ローバーの改良に使えると考えたからだ。話しをしていると、電話の相手は元同僚から、六太をクビにした張本人・間寺役員に代わった。間寺の要件は、娘が新田のファンなので、サインが欲しいということ。少なからず宇宙に興味があると知った六太は、これをチャンスだと思い、すかさず協力を求めた。「車のプロの実力をぜひ、宇宙で役立てたいんです!」六太の言葉に気をよくした間寺は、NASAのローバー開発に、格安で協力することを約束してくれた。さらにJAXAの星加とも連絡を取った六太は、具体的な改良案を完成させ、ついにプレゼンテーションまでこぎつけた。もしこの改良案が実現可能と判断されれば、今度こそ六太にも月への訓練に参加できるかもしれない。期待を膨らませバトラー室長らを待つ六太たち。その手には、ダンボールで作られたローバーの模型があり――?
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第71話 彩排
次なる六太の目標は、月ミッションへの道を開くため、月面の谷に落ちても壊れないバギーか、もしくは落ちないバギーを作ること。なにか良い案はないかと模索していたある日、六太は日々人と、兄弟並んで雑誌の表紙に載ることになった。撮影場所は、古い倉庫の中だった。倉庫の中に入ると、まるで月面のような、カッコいい撮影ステージが広がっていた。表紙写真のコンセプトは、『日本人ムーンウォーカー第1号南波日々人と、その後を追って月へ向かう兄の六太、同じ舞台で追いつ追われつがんばっているライバル兄弟をテーマに、今の二人の姿を通じて世の働く人々にメッセージとして感じとってもらおう』というもの。そのため日々人は宇宙服でビシッと決めていたが――六太の衣装は変だった。元サラリーマンが宇宙飛行士になって今まさに宇宙を目指しているという表現のため、六太の衣裳は、上半身は宇宙服なのに、下半身はズボンと革靴だったのだ。撮影が始まると、六太は日々人の様子がおかしいことに気付いた。宇宙服のヘルメットの中の日々人は、汗をにじませ、険しい顔をしていたのだ。心配する六太に、日々人はなんでもないというが――……?日々人、ロシアへ出発の日――。新たな訓練のためロシアへ行く日々人を見送った六太は、雑誌の編集者からもらった写真を見ていた。それは、月面に2人が並んでいる写真。『とりあえず、リハーサルは終了だな、日々人――』兄弟そろって月面に立ちたい、すぐに追いついてやる、六太の顔はやる気に満ちていた。一方、日々人は険しい表情で2人の写真を見ていた。六太に知らせていないが、日々人の新しい訓練の内容は、『パニック障害を克服する』ためのものだったのだ。月での遭難が日々人の心に恐怖を植え付けてしまい、危険性を伴う状況で宇宙服を着ると、発作が出てしまうのだ。しかも、船外活動ができないうちは、月ミッションには加われない。事態はかなり深刻で――!?
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第70話 放棄的覺悟
バトラー室長に呼び出され、自分が新人にしては異例の出世コース、『バックアップクルー』に推薦されたことを知らされた六太。バックアップクルーとして一通り訓練を遂行すれば、次はもう宇宙へ行けるらしいのだが、その行き先は月面ではなく、ISS(国際宇宙ステーション)への搭乗とのことだった。本来は喜ぶべきことだが、シャロンとの約束を守るため、誰よりも早く月へ行きたいと思っていた六太は、大いに戸惑っていた。もしISSの方向に進んだら、宇宙へは近道になるが、月へは遠回りになってしまうのだ。しばらく一人で考えた末、六太は自分にとって一番の金ピカである『月』を目指し続けることにした。そして、自分よりふさわしい人物である伊東せりかに、ISSへの席を譲ることに決めたのだった。願い通り、せりかがISSのバックアップクルーに選ばれると、その直後、六太の研修先も決まった。それは、機械音が響く工場の中にある、月面基地局の開発部署だった。これから六太は、少々クセのある技術者・ピーター、ダン、ハロルドたちとともに、バギーの開発・改良業務に加わることになったのだ。六太がここで良い働きを見せれば、自ずと月への道は開かれる……という話だったが――前途は多難だった。目下の課題が、月面バギーの改良だったからだ。これは、『落ちても壊れないバギー』にするか、あるいは『落ちないバギー』にしなければならないという難題であった。解決の糸口をつかむため、技術者たちに詳しく話しを聞く六太。驚くべきことに、これまでずっとバギー開発は、車の専門家を雇わずに作ってきたらしい。だが、すべてNASA独自の技術ではあるものの、タイヤもブレーキもほぼ完璧に仕上げられていた。これ以上改良すべきところがない現状、残された道は『落ちないバギー』を考えるしかないのだが……良い案はなかなか浮かばない。かつては自動車開発のプロだった六太、本領発揮なるか――!?
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第69話 與日日人並肩
2026年8月23日、日本にてアニメ版ミスターヒビットがスタートした頃――、六太はジョンソン宇宙センターの超巨大プールにて、無重力に似た環境での船外活動の訓練に励んでいた。2026年11月1日には、六太や宇宙飛行士仲間たちが、デニール・ヤング、68歳の誕生日を祝い、丸いグラサンをプレゼント。2027年6月20日――たくさんの訓練とイベントを経て、六太たちは『デニール引退の日』を迎えた。引退式直前、ラストフライトのためマックス号へと向かっていた六太に、デニールは一つの頼みごとをする。それは、離陸から着陸まですべて六太にやって欲しいというもの。本来、訓練生が離着陸を任されることはないのだが、「お前はワシが育てたんだ。自信をもってこの身をゆだねられる」とデニール。規約違反になると戸惑いつつも、六太はデニールの最後の頼みを受け入れる。「最後の生徒がお前でよかったぜ、ムッタ」ラストフライト後――引退式。主役であるデニールを囲み、六太や職員たちが、水の入ったバケツを構えて立っていた。デニールは軽く笑みを浮かべると、六太の目をまっすぐ見て言った。「心のノートにメモっとけ。引退式でぶちまける水の勢いは、退く者への感謝の大きさに比例する」六太は泣きそうになるのをこらえ、誰よりも先に、バケツの水を遠慮なきスイングでぶちまけた。その大きなしぶきは、デニールへの大きな感謝の証となり、職員たちの水しぶきが後に続く中、六太の心のノートには、デニールとの日々がメモられていた。そして――ついに六太たち訓練生は、正式な『宇宙飛行士』に認定された。これでようやく、六太は日々人と並ぶことができたのだ。さらに、バトラー室長に呼び出された六太は、重大発表を聞くこととなった。1年半後のミッションで、六太がバックアップクルーに推薦されたというのだ。いきなり日々人にならぶ出世コース、驚いた六太の反応は――!?
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第68話 兩臺電子琴
「今回担当する教え子が宇宙飛行士に認定されたら――ワシは引退すると決めとった」自分が教官・デニールの最後の生徒だと知った六太は、一流の宇宙飛行士になるために、一流のパイロットを目指すことを決め、懸命に訓練を続けていた。しかしある日、新しくきたシャロンの手紙から、彼女が少し元気をなくしているようだと感じとる。『いま出来ることで、シャロンに喜んでもらえるようなことはないか――』考えた末、六太はシャロンに、『大きな荷物』を贈ることにした。一方――。シャロンに元気がないようだと感じていたのは、六太だけではなかった。同じように手紙をもらっていた日々人も、シャロンのことを心配していたのだ。そのため、会議や講演会でいったん日本に帰国した日々人は、多忙なスケジュールをやりくりし、『大きな荷物』を持ってシャロンに会いに行くことにした。シャロンの研究所へ着くと、日々人はまっすぐピアノの部屋へと向かった。ピアノの鍵盤を押し、自分が買ってきた『大きな荷物・キーボード』の鍵盤の方が軽いことを確かめると、笑顔でこう言った。「シャロン、これで気晴らしに一曲出来るよ」笑顔の日々人に、驚きと喜びの涙を浮かべるシャロン。そして、一緒にいた助手の田村も驚き、感動していた。それもそのはず、実は六太からも『キーボード』が贈られていたのだ。きちんと手紙も同封されており、最後の一文には「弾いてみてよ 六太より」と書かれていた。六太と日々人に送られたシャロンの手紙には、「手に力が入らなくなり、大好きなピアノを弾こうにも、鍵盤は重く、弾くことが出来なくなった」と書かれていた。そのため、照らし合わせたわけでもないのに、六太と日々人はシャロンに同じものを贈っていたのだ。離れていても、シャロンを思う気持ちは同じだった六太と日々人。久々に室内に響いたシャロンの演奏は、ゆっくりではあるが、とても嬉しそうな音色だった――。
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第67話 丹尼爾化
自分でコントロールできる限り、精一杯やる――。そう覚悟を決めた六太だったが、T-38の操縦訓練は、決して順調とはいえなかった。教官・デニールが、飛行中なにかとジャマを入れてきて、景色を観る余裕すらなかったのだ。焦る六太にデニールはいう。『一流のパイロットは、飛行機を飛ばしながら気の利いたジョークも飛ばせ、いつでもどこでもアクロバットで楽しめるもんだ』六太には一流の宇宙飛行士になって欲しい、そのためにも一流のパイロットになって欲しいというデニール。実のところデニールは、今回担当する教え子が宇宙飛行士に認定されたら、教官を引退すると決めていた。六太が最後の生徒なのだ。その頃、日々人は――。ダミアン、リンダ、ピコと共に、無事に帰還できたことに祝杯をあげつつ、訓練中の六太のことを話題に上げていた。デニールの教えを受けていた日々人は、その内容がやたらと負荷をかけてくる事を知っており、六太がもう『デニール化』した頃ではないかと楽しそうに語った。デニール化とは、知らず知らずのうちに自分が凄腕パイロットになっているということをいう。改造されたマックス号に乗ることや、やたらと話しかけ頭の中の処理項目をどんどん追加させるデニールの行動は、すべて利にかなった訓練方法だったのだ。そうとは知らない六太だったが、見事『デニール化』していた。その運転技術は目隠し飛行をしながらアクロバットができるほど上達していたのだ。訓練中、デニールに六太は、なぜ訓練前いつも写真に敬礼しているのか尋ねた。「彼らにあいさつもなしに、アスキャンに操縦を教えるのはなんか後ろめたくてな」写真に写っている彼らは皆、事故で殉職したパイロットたちで、中には訓練中の事故で死んだ宇宙飛行士もいるというのだ。この大事な事実に関してデニールは、いつもの「メモっとけ」を言うことはなかった。だが六太はしっかりと、『心のノート』に記していたのだった。
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第66話 兩個筆記本
自信満々な教官・デニールのもと、宇宙飛行士になるために欠かせない、ジェット機・T-38の操縦訓練を受けることとなった六太は、初飛行だというのに、4倍以上の重力が加わる飛行の時だけに必要な、『Gスーツ』を着込まされてしまう。不安な表情を浮かべる六太に、デニールは機体をチェックしながら語り始めた。「飛行前のチェック作業は気を抜くな。事故った時、整備士に責任を押し付けるのは、パイロットの恥っちゅうもんだ。心のノートにメモっとけ」情報や知識は頭のノートにメモり、大切な事柄は心のノートにメモる、最初の教えであった。初飛行後――。デニールのアクロバット飛行に度肝を抜かれ、すっかり気持ち悪くなってしまった六太。そんな六太に、デニールは楽しそうに『もう一度乗るか?』と聞いてきた。止まるも進むも、コントロールするのは自分次第なのだ。「ちなみにヒビトは吐いた後、うれしそーな顔しながら、もっかい乗せろと言ってきたぞ。心のノートにメモっとけ」兄が弟に負けるわけにはいかない。六太はヘルメットを掴むと、もう一度乗せろと合図したのだった。「イッツ・ア・ピース・オブ・ケイク!」そして訓練の日々は続き――。休憩中、六太はずっと気になっていたことをデニールに質問した。『なぜ歩けるのに車椅子や杖を使っているのか?』と――。いつか本当に歩けなくなるシャロンのことを考えれば、デニールがふざけてるようにしか見えなかったのだ。デニールは『これもすべて訓練だ』と答えた。晩年脚を悪くした父や祖父と同じように、いつか自分も歩けなくなるかもしれない。杖の使い方も車椅子の操作も、今のうちにバッチリ訓練しておけば、後々自分のためになるからだというのだ。六太はシャロンからもらった手紙を思い出していた。シャロンも文字を書く訓練で、少しでも病気に打ち勝とうとしていたのだ。コントロールできる限りできることをしよう――そう決意する六太だった。
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第65話 坐輪椅的機師
飛行訓練のテストで最低点をとってしまった六太は、たったひとり、追試を受けていた。しかし、今回の六太は前と違った。『誰よりも早く月へ行き、シャロンの見たがっている小惑星の姿を見せる――!』その集中力は凄まじく、試験官も圧倒されるほどだったのだ。追試後――。飛行場へ向かう廊下で、六太は突如大きな物体に衝突されてしまう。「ワシがかわす方向によけてきたのはお前が初めてだ。ウハハ」その声の主は、なぜか電動車イスに乗ったデニール・ヤング、日々人に飛行訓練をした教官だった。六太と電動車イスのデニールが、ケンジたちが訓練を受けている格納庫に到着すると、そこには何台ものT―38が駐機していた。T―38ジェット練習機、通称ティーサンパチは、アメリカ空軍が訓練に使うジェット機である。だが、宇宙飛行士も必ずこの機体で訓練をするのだ。操縦はもちろん、天気の確認、地図の読み取り、管制とのやり取りなど、同時に色んな仕事をやることが、宇宙飛行士にとっても大切だからだ。飛行訓練では、成績優秀な訓練生には、優れた教官がつく。できる生徒に高いランクの教官をつけて、優先的に伸ばしていく方式なのだ。「ちなみにワシは最低ランクだ」そう言い、ウハハと笑うデニール。理由はデニールの操縦に耐えられる生徒がいないからだった。「ヒビトもテストで最低点を取ったからな! ワシが担当になった」滑走路につくと、デニールが自分専用のT―38に案内してくれた。こっそりジェットエンジンを改造したもので、推進力がほかの1・5倍あるという。「ターボ ジェットエンジン並みだぞ! ウハハッ!」そう笑うと、デニールは車イスからすっと立ち上がり、スタスタと歩き出した。足腰を悪くしたわけではなかったのだ。その元気な立ち姿に、驚く六太。デニールは襟を正すようにジャケットを着ると、二カッと笑った。「ワシについてこれるなら、他のヤツの1・5倍早く仕上げてやる」
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第64話 小菜一碟(a piece of cake)
ジョンソン宇宙センター・一室――。真剣な顔つきで筆記テストに臨んでいる訓練生たちの中、六太の手は止まっていた。誰よりも早く月へ行き、シャロンとの約束を果たしたいと思っているにも関わらず、まったくテストに集中できないのだ。数日前――。六太とせりかは、シャロンの症状を解明するため、神経内科病院へ来ていた。せりかがシャロンの腕を叩いた時、筋線維束収縮の反応があったからである。せりかは、シャロンが自分の父と同じ病気、『ALS』の可能性を心配していた。『ALS』とは、運動ニューロンという神経だけが障害を受け、脳から筋肉を動かす命令が伝わらなくなっていく病気である。そのせいで筋肉がやせ、徐々に手足が動かせなくなり、食べることも、話すことも、自力での呼吸もできなくなってしまうのだ。シャロンの検査結果は、ALSだった。あと数ヶ月で、シャロンは大好きなピアノも弾けなくなってしまうのである。そのことを告げられても、それでもシャロンは笑顔を忘れなかった。六太は、「僕はいざという時、役にも立たないダメ人間です」を英語で言うとどうなるか、シャロンに聞いた時のことを思い出していた。『イッツア・ピース・オブ・ケイク』直訳すれば「ケーキ一切れ分」ということだが、違う意味もあるというシャロン。その時の六太は、マイナスの意味で受け取ったが、本当の意味は――。『楽勝だよ』こういうウソを、平気な顔でついてしまうのがシャロンだった。後日、六太のにシャロンからメールが届いた。『私も3年後か4年後かに、あなたに月面望遠鏡建設計画の全ての説明を伝えに行く予定です。覚えることだらけよ――覚悟はいい?』メールに返信しようとするも、その手は動かない。シャロンを元気づけられるような文章が、考えても考えても生み出せなかったのだ。そのため六太は、シャロンに教えてもらった言葉で返した。『イッツア・ピース・オブ・ケイク』――。
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第63話 年輕歲月的心跳
ジョンソン宇宙センター・講義室――。宇宙飛行士として認定されるには、ジェット機、T―38の操縦資格が必要である。そのため六太たち訓練生は、空軍の学生が3週間かけて習う内容を、3日間で覚えることとなった。さらに5日後には筆記テストが行われるらしく、そのテストの結果次第で今後の訓練の各種優先順位が決まってくるため、誰よりも早く月へ行きたいと思っていた六太は焦っていた。「順位がつくものなら、常にトップを狙わねえと――!」その頃、ゴダード宇宙飛行センター・カフェテラスでは――。会議を終えた天文研究者たちとシャロンが、ワイワイと盛り上がっていた。シャロンが提案した電波望遠鏡の計画に好感を持ち、同じ研究者であるモリソン博士らが話しかけてきてくれたのだ。しかもモリソンは、シャロンと同じく、思い入れのある小惑星の姿を、鮮明に見たいと願っているらしい。同じ志の仲間を見つけることができ、シャロンの計画は、一歩一歩実現に近づいていた。そして――。シャロンは日々人たちに会うため、ヒューストンへと移動する。久々の再会に喜ぶシャロンだが、どうにも体調がよろしくない様子。手に力が入らず、バランスも崩してばかりなのだ。念のため医者にも診てもらうが、異常なしとのこと。シャロン自身も時差ボケによる脱力感であると思っていたが、果たしてそうなのだろうか。その夜――。レストランでは、ケンジやせりか、南波父母やシャロンたちが集まり、『日々人お帰り会』が行われていた。せりかは、子どもの頃からファンだったシャロンに会うことができ、感激。しかしふと見ると、シャロンの手にしていた携帯は、ところどころが欠け、傷が付いていた。それは、病気だったせりかの父と同じ状態。不安を感じたせりかは、シャロンの左腕を取ると、肘のあたりに手をあてた。その反応を診て、青ざめるせりか。シャロンの症状は、せりかの父と同じ病気のようで――……?
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第62話 遙望遠方的人
月から帰ってきた日々人は、地球の重力に慣れるため、リハビリを開始しようとしていた。寝て検査して運動してまた寝て、そういうサイクルがこの先45日間続くのである。一方六太は、アマンティに『不安な未来の話の続き』を聞いていた。「私が見たのは……ムッタがとても悲しんで……辛い思いをしている姿……」六太に直接何かが起こるわけではないらしい。「帰ってきたヒビトを見て分かったの、ヒビトもあなたと同じように――辛い思いをすると思う」どうやら六太と日々人にとって大切な誰かが、重い病気になるらしいのだ――。その頃、ゴダード宇宙飛行センターでは――。天文学者であるシャロンが、宇宙開発についてプレゼンをしていた。シャロンの提案は、NASAの宇宙飛行士に協力を依頼し、月面で望遠鏡を組み立ててもらおうというもの。「我々天文学者には、遥か遠くまで行く力はありませんが、遥か遠くを見る力なら、我々に勝る者はいません。きっと実現できます。ここにいるみんなの力があれば――」そして――。六太たち宇宙飛行士候補生たちは、ジョンソン宇宙センターの近くにあるエリントンフィールド空港に来ていた。宇宙飛行士に認定されるためには、ジェット機、T―38の操縦資格が必要なのだ。航空力学に始まり、エンジンシステムなどのメカニック、基本的な航法に各種飛行ルールなど、覚えることは山ほどあるのである。六太はジェット機に乗ることをずっと楽しみにしていた。いつか見た日々人のように、六太も人生初のマッハを体験できるかもしれないのだ。だがそんな気持ちとは裏腹に、六太は眠かった。アマンティの言葉が気になって、ぜんぜん眠れなかったのだ。そこに、プレゼンを終えたシャロンから「ヒューストンまで来たので会おう」と連絡がくる。電話の声では元気そうだが、手を滑らせ携帯を落としたりと、どうも様子がおかしい。六太は不安になっていた。『まさか……シャロンが……!?』
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第61話 等待日日人的人們
日々人が月から帰ってくる――。地球に帰還する時の命綱となるパラシュートを手がけたのは、ピコ・ノートン。六太たちが訓練として参加した、「カムバックコンペティション」のサポート役だ。しかし、今回は3年前のパラシュート事故以来、初めての月からの帰還である。事故を知る関係者の間には、緊張が走っていた。その頃、日々人、リンダ、ダミアンは、着陸船アルタイルに乗り、月面を離れていた。月軌道上には地球への帰還船3機が回っており、日々人たちが乗って行ったオリオンと、ロシアチームのルーニエ2号、もう一つは予備として、2025年に無人で月に送られた、3人乗りのオリオンがあった。今回日々人たちが帰還船として乗り込むのが、この3人乗りのオリオンである。日々人たちの帰還日――。ピコは、自宅の洗面所でヒゲや髪を整え、見違えた姿になっていた。なぜキッチリネクタイを締めるのか、と息子たちに聞かれると、ピコは言った。「ネクタイを締める理由なんてのは、1コしかねえ、仕事が無事に終わった後に、緩めるためだ」その顔は、『必ず日々人たちを地球へ帰す』、そう願掛けをしているかのようであった。ジョンソン宇宙センター――。管制室内には、大勢の管制官、宇宙飛行士、六太たち訓練生が集合していた。そしてその外側の観覧室では、南波父母、ジェニファー、ピコが、日々人の帰りを今か今かと待ちわびていた。そして――。砂漠の真上に、パラシュートが全てキレイに開いたオリオンが、見事に降下してきた。日々人たちは無事、地球に帰還できたのである。大歓声の中、ジョンソン宇宙センターの滑走路に、ダミアン、リンダ、そして日々人が到着した。規制線の外には、六太、南波父母、アポも来ていた。重力にやや汗しつつも、手を振って歩いてくる日々人。目の前に日々人がくると、六太はまるで近所から帰ってきた弟を出迎えるように言った。「よう日々人――おけーり」と――。
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第60話 海人和宇宙人
宇宙飛行士候補生の訓練として、カムバックコンペティションに参加することになった六太たちは、2週間の準備期間を経て、ついに大会当日を迎えていた。しかし、六太たちE班には試練が待ち受けていた。局地的な雨によって、コースの一部がぬかるみになってしまっていたのだ。E班のローバーはスポンジタイヤ。スポンジが水分を吸収してしまったら、負荷がかかって止まってしまうのだ。打ち上げまで時間がない。六太たちは、スポンジタイヤを濡らさない方法を、早急に考えなければならなくなった。宿泊していたホテルに戻り、なにか使えるものはないかと探す六太たち。案内して貰った備品倉庫で、六太は気づく。このコンペの訓練は、チームワークの向上だけが目的はないこと。今体験しているのは、宇宙開発の縮小版であり、宇宙飛行士を無事に送るため、支える側の人達がやってきた仕事なのだ――と。六太たちがコンペ会場のテントへ戻ってくると、すでにロケットの打ち上げが始まっていた。「大丈夫だよ、みんな。想像では、うまくいってる!」六太は、備品倉庫で手に入れた『シリコンボンド』をスポンジタイヤに塗ると、見事、水濡れを防止することに成功した。コンペ結果発表――。六太たちE班は、全体の5位になることができた。1位のチームは、日本からきた海人チーム。どのチームもゴールまで届かない中、海人チームのローバーは圧倒的なスピードで、ゴールフラッグに辿り着いたのである。日本人同士ということもあり、気さくに話しかけてくれる海人チーム。そしてなぜか、海人チームの上司が六太と電話で話したがっているとのことだった。その上司とは、かつて一緒に宇宙飛行士を目指した仲間、今は民間ロケット工場で働いている福田だった。『こっちもがんばってるよ――君たちが宇宙へ行ける頃に、僕らも日本の有人ロケットを、宇宙へ送り出せるようにね』福田も日々、宇宙に向かって進んでいたのだ――。
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第59話 誓約的印記
宇宙飛行士候補生の訓練、カムバックコンペティションの準備をする中、なぜか六太は、サポート役のパラシュート技術者、ピコ・ノートンから飲みに行かないかと誘われる。酒の席には候補生たちの教官であるビンセント・ボールドもおり、どうやら2人は、失敗に前向きな六太を、共通の親友・リックと重ねているらしかった。リックとピコとビンスの子供時代――。3人の夢は、いつか自分たちでロケットを作り、宇宙へ行くこと。それは、『いつか宇宙へ行く』と毎日誓いを交わすほど、熱心だった。しかし親や教師たちは、3人の夢に反対していた。将来は鉱山で働くよう強く説得していたのだ。ピコとビンスは反抗することが出来ず、宇宙への夢を諦めると言い出す。『テンションの上がる仕事じゃねえが……鉱山技師も悪くない』『宇宙への夢は最初から俺たちにはでかすぎた』2人の諦めの言葉を聞き、リックは激高した。『こんなど田舎の街で宇宙に本気で憧れた3人が出遭えたんだ。俺はそれだけでも、奇跡だと思ってた。拳を合わせる気がねえんならもういいよ。勝手に鉱山でもどこへでも行ってくれ――俺は絶対諦めねえからな』それ以来、3人は決別してしまった。そして――。ビンスとピコが進学の説明会に出席した日の午後、リックは事故で死んでしまった。乗用車に乗っていたリックは凍結した路面にハンドルを取られ、そのまま湖に突っ込んでしまったのだ。ピコとビンスは、この日のことを死ぬほど後悔した。後悔という言葉では、全く足りない程に――。ISSが来る日――ピコとビンスは夜空を見上げていた。「テンションの上がらねえことに……パワー使ってる場合じゃねぇ………!」「迷ってるヒマなんてない。人生は、短いんだ……!」ピコとビンスは拳を上げ、『宇宙へ行く』という誓いのサインを、力強く交わすのだった。そして、現在――。大会当日を迎えた六太たちE班は、また新たな試練にぶつかってしまい――?
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第58話 認真的失敗
宇宙飛行士候補生たちが「カムバックコンペティション」へと挑戦する中、なぜか六太はピコに気に入られ、酒の席へと誘われていた。集合場所である酒場へ向かっていると、駐車場で教官・ビンスと出くわす六太。聞けばビンスもピコと酒を飲むらしく、酒場まで車に乗せてくれることとなった。道すがら、猛スピードで車を運転しながら、ビンスは六太に質問を投げかける。『君にとっての、敵は誰ですか?』ビンスにとっての敵は、マスコミだという。理由は、マスコミの大多数が宇宙開発、有人飛行を長い目で見てはくれないからだった。他にも、国の予算が有人に多く使われることに反対し、口をそろえて金のムダ遣いといい、無人機のみの宇宙開発を提唱する、科学者、ロボット業界、天文学者たち。有人飛行を邪魔する者は、ビンスにとってはみんな敵のようだった。六太は答えた。宇宙が好きで関わっているのなら、みんな仲間でいいのではないか――?『俺の敵は、だいたい俺です』自分の宇宙へ行きたいという夢を、さんざん邪魔して、足をひっぱり続けたのは、結局自分であり、そういうことに気付かせてくれたのが、天文学者のシャロンだった――と。酒場でピコと合流すると、話題は六太の『失敗に前向きな性格』へと変わる。『本気の失敗には価値がある』と言い放つ六太に、ピコとビンスは少年時代共通の友達だった、リックのことを思い出していた。ピコとビンスが生まれた町は、ミネソタ州・ポットヒルの田舎町。宇宙に憧れ、ロケットを作りに奮闘しながら、共通の友達リックは口癖のようにこう言っていた。『本気の失敗には……価値がある』――と。ピコ、ビンス、リックの3人の将来の夢は、有人ロケットを作り宇宙へ飛び出すこと。管制官になったリックが、宇宙飛行士になったビンスに指示を送り、そのビンスは、ピコの作った宇宙船に乗るのが目標なのだ。しかしこの夢を、親や教師、町の大人たちは皆反対しており――?
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第57話 技術人員的開關
六太たちE班の宇宙飛行士候補生は、「カムバックコンペティション」に挑戦するため、決められた予算内でキャンサット作りに励んでいた。しかし、パラシュートがうまく開かなかったり、ローバーが障害物を越えられず、すぐ止まってしまうという問題が発生してしまう。みんなが頭を悩ませる中、六太は車づくりの知識と大胆な発想力を駆使し、プログラムの変更とタイヤをスポンジで作ることで打開しようとする。スポンジならギュッと縮めて筒に入れられ、走る時には十分な大きさに膨らむ、軽いし安いし、加工もしやすい。着地の時のショックもやわらげることができ、いいこと尽くしである。これまで様子を見ているだけだったピコは、自分ができなかった発想と、失敗を乗り越えて良い物を作ろうとする六太の考え方に衝撃を受けた。「パラシュートの『パ』ぐらいは教えてやってもいいかな」ピコはパラシュートの布を素早くキレイに畳みながら、作業の心構えを話し始める。それは、キャンサットが本物の宇宙船と考え、自分の隣にいる宇宙飛行士を一緒に乗せて打ち上げるつもりで、全部の作業をやれということ。そして、隣の男の命を預かったつもりで、パラシュートは女子が畳む方がより良いことを教えた。「パラシュートってのは、愛で開く」その昔、戦場へ行った夫やボーイフレンドに無事に帰ってきて欲しいという願掛けの意味で、パラシュートが開く生命線になる収納作業は女性がやっていた。成功率を少しでも上げるため、ゲン担ぎとして女性がやったほうが良いらしいのだ。ピコのアドバイスと、六太の大胆な発想のおかげで、E班にもようやく成功の兆しが見えようとしていた。その頃、宇宙では――。吾妻たちの乗る宇宙船・ルーニエ2号が、月周回軌道に到着し、着陸船ナウカによって、無事月面に降り立っていた。数時間後には、ムーンベースに滞在している日々人たちCES―51のクルーとの対面果たす予定となっており――?
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第56話 酒約
六太たち宇宙飛行士候補生の次なる訓練は、カムバックコンペティションへの挑戦だった。カムバックコンペティションとは、パラシュートの展開システムや、自動制御のローバーを作り、どのくらい正確にゴールへたどり着けるかを競う大会である。しかし最下位でゴールしたE班のサポート役は、全くサポートする気のない屁こき技術者、ピコ・ノートン。しかも完全な酔っ払いだったのだ。ピコに不安を感じた六太とケンジは、ピコが所属するデンバー社の職員に、彼について話を聞くことにした。職員によると、ピコは帰還船オリオンの開発を任されており、さらにパラシュートの展開システムを開発・製造するサブプロジェクトの総合責任者とのことだった。しかも、日々人たちが帰りに乗るオリオンのパラシュートも、ピコが手掛けたものらしい。職員は熱く語る。ピコはただの酔っ払いではない、試行錯誤を繰り返し、やっと今の使えるパラシュートシステムに仕上げた技術者が、ピコ・ノートンなのだと。気を取り直し、ローバーの制作を開始することにした六太たちE班。ネットで調べた図面を頼りに、ボディらしきものを作ったのだが、一つ問題が浮上した。E班は最下位チームのため、制作費は600ドルと一番低額で、このままだと1機しか作れないのである。六太は言う、「失敗して壊れるの前提で、最低でも2機作れるくらいの余裕があった方がいい。モノ作りには失敗することにかける金と労力が必要だ。失敗を知って乗り越えたモノなら、それはいいモノだ」と。六太の言葉を聞いたピコは、ブライアンが亡くなった、アレス計画を思い出していた。失敗を繰り返し良いものを作っていたにも関わらず、予算の問題で計画にピコのパラシュートシステムが採用されなかったのだ。「人の命預かってんだ! 金に糸目つけてんじゃねえ!」もしピコが担当すれば、ブライアンは生きていたかもしれなかった。そのことをピコはずっと悔いていたのだ。
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第55話 遙不可及的終點
宇宙飛行士候補生・アスキャンが、砂漠70キロを踏破するサバイバル訓練の最終日。にも関わらず、六太は高熱にうなされ、ダウンしてしまっていた。一人でもリタイアすれば、仲間全員がリタイアしたことと同じ。E班全員がリタイアするか、それとも今日中のゴールを目指して進むか、六太は判断を迫られていた。しかしこの日のリーダーは、未来が見えるアマンティ。彼女にはわかっていた、六太が続けるということを。「南波の荷物は、俺が全部持つよ。当然だ」六太の具合が悪くなったのは自分のせいと思っていた新田は、出発の時、六太のリュックを持ち上げ、一人で背負おうとしていた。しかしケンジもせりかも、仲間全員、六太の荷物を持ち、サポートする気満々。仲間の優しさに救われ、六太は思う。「最下位でもなんでもいいから絶対……ゴールまで歩いてやる。1位と最下位の差なんて――大したことねーんだよ」辛い道中だったが、ようやくゴールが見えてきた。「着いた……これでようやく次の訓練に――ん?」六太たちの視線の先に、上空からパラシュートの付いた物体が落ちてくる。やがて車道脇の乾いた大地にドシュッと落ちる――と、パラシュートの先についていた物体、留め金がバカッと外れ、ザザッとタイヤのようなもの(キャンサット)があたりを走行しはじめた。それはサバイバル訓練をトップでゴールしたA班のもの。カムバックコンペティションに参戦するため、早々に研究している真っ最中だったのだ。カムバックコンペティションとは、昔から開催されている、宇宙好きの学生たちを中心とした超小型衛星・キャンサットの打ち上げ大会のこと。アスキャンたちは次の訓練で、キャンサット(パラシュートの展開システムと、自動制御で動くローバー)を作るのだ。指導してくれる技術者を選べるのは、サバイバル訓練のゴール順。そのため最下位のE班は、残り物の『やる気のない訓練教官』を掴まされてしまい――?
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第54話 我幸運嗎?
サバイバル訓練、5日目の夜――。六太は焚き火を眺めながら思っていた。『……なんか見えるな……いろんなもんに』六太の視線の先には長いサボテンがあり、それが手前の焚き火の形と合わさって、ロケットと噴射炎に見えてきたのだった。その光景から六太は、日々人を乗せたロケット・マルスワンが飛び立つ姿と、その時一緒にいたデニール・ヤングの言葉を思い出す。『――空は誰の物でもない。だが人生は自分のもの。人生はコントロールがきく』「あれから俺は宇宙飛行士になって……少しは人生のコントロール、効いてんのか? いや……俺は……どこへ行くんだろう……」さらに六太は、宇宙飛行士としての一歩を踏み出し始めた日のことを思い出していた――。『我々JAXAは君を――宇宙飛行士として迎えます――おめでとう! 君には運がある!』宇宙飛行士選抜試験・合格発表の日、六太はJAXAの職員・星加に呼び出され、近所の公園で合格結果を聞いたのだ。そしてその数カ月後――。六太は日々人と交わした『一緒に月へ行く』約束を果たすため、ヒューストンでの合同基礎訓練へ望んでいた。合同基礎訓練とは、各国の新人宇宙飛行士候補生がNASAに集まり、一緒に同じメニューの訓練をこなすというもの。ヒューストンへ着くと、さっそくNASA主催の歓迎会で、新たな仲間・占いがことごとく当たるという、アマンティと出会った。軽い気持ちで六太も占ってもらったのだが、明らかに不穏な眼差しを見せるアマンティに不安が募る。一体、六太の未来になにをみたというのだろうか――?――その謎が解けぬまま、現在。明日はいよいよサバイバル訓練の最終日となっていた。どこまで順位を上げられるかが勝負なのだ。にも関わらず、ぶるっと身震いする六太。どうも体調がよろしくない。『もしかして……このことか……?』病は気からと信じたいものの、六太はアマンティの不安な占い結果を思いだしていた――。
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第53話 兩人一起活著站上月球吧
日々人が月に来て2カ月――。「俺ももう全然行けるんだけど、外」船外活動するフレディとリンダを眺め、日々人が羨ましそうにつぶやいた。あの事故以来、日々人には船外活動の許可がおりないでいたのだ。サポート中のバディと話しながら、月に来てからのことを振り返る日々人。2カ月よりもっと長い間月にいる気がするのは、やはりあの事故のせいのようだった――。日々人たちが月に来て間もなくの頃――。無人探査機・ギブソンとの通信が途絶えた。管制からその連絡を受けた日々人とダミアンは、ギブソンを見つけ出して修理するため、基地を離れることとなったのだ。しかしその途中、日々人とダミアンが乗ったバギーは、突然の衝撃に見舞われてしまう。気づくと、そこは太陽光の届かない暗い谷底だった。一緒にいたダミアンは足をケガして立てなくなっており、音声機能と体温を調節する循環機能も故障してしまったようだった。そして日々人も、酸素のメインタンクを脱出の際に破損してしまい、危険な状態となってしまう。それでも日々人は諦めず、凍え続けるダミアンを発見したギブソンに乗せ、太陽の光があたる安全な場所へと連れて行く。だがその時にはもう、日々人の酸素は残りわずかとなっていた。どう考えても、基地からの救援は間に合いそうにない。どうせ死ぬなら満点の星空を見て死にたいと思い、日々人は再び谷底へと向かおうとしていた。しかしその途中、ピカッと光るモノを視界の端でとらえる。気になって光に近づくと、それは大先輩ブライアンが『いつか兄弟で月に立てるように』と望んで残したフィギュアだった。さらに奇跡は続き、日々人の目の前には、酸素を生成できるローバー・ブライアン3号も現れたのだった――。――そして現在。『今度あそこに行く時は、きっとムッちゃんと一緒だ』日々人はブライアンフィギュアが置いてあった場所を思いながら、六太と交わした約束が果たされることを願うのだった。
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第52話 永遠是兄弟
宇宙飛行士候補生・アスキャンの、サバイバル訓練5日目の夜。砂漠のど真ん中でキャンプをしていた六太は、たくさんの流星群を見上げながら、子どもの頃を思い出していた――。2006年7月9日。星空の下、録音機を持って調査遊びをしていた六太と日々人は、偶然にも月へ向かうUFOを目撃し、『二人で一緒に宇宙飛行士になる』と、約束を交わした。そして2025年5月――。日々人は約束を守って宇宙飛行士になったが、六太は自動車会社をリストラされ、職探しの真っ最中となっていた。『兄とは常に弟の先に行ってなければならない』なのに何をやっても六太を追い越し、先を行くのは日々人だった。六太は落ち込んでいた。自分は何がやりたかったのか……と。そんな時、母に事情を聞いた日々人からメールが来る。『2006年の7月9日。ムッちゃんが録ってたテープを聴いてみろよ』テープを探し出して聴くと、そこにはハッキリとした言葉で、子どもの頃の『約束』が残されていた。テープを聴いて以来、六太は日増しに宇宙への想いを膨らませていた。そしてある日、なぜか自分宛てにJAXAから封筒が届く。それは新規宇宙飛行士選抜試験の、書類選考合格通知。実は日々人が母に頼み、JAXAに六太の履歴書を提出していたのだ。しかし六太は、次の選考試験を受けるか悩んでいた。その気持ちを察したシャロンは、『今のあなたにとって、一番金ピカなことは何?』と助言する。六太はようやく思い出す。『月にシャロンの望遠鏡を建てたい』、そう思っていたことを。一カ月後――見事筆記試験に合格した六太は、喜びのあまりトランペットを吹き鳴らしていた。『メロディなきメロディを奏で、道なき道へ行こう。そこに俺にとって一番の、金ピカがあるのだ――!』現代・砂漠のど真ん中――。六太は遠い先へと続く、道なき道を眺めていた。そして、早く宇宙に行きたいという気持ちをこめ、流れ星に願いを叫ぶのだった。
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第51話 活生生的小石頭
受到六太的感動,新田終於說出了有關於手機的真相,雖然新田並沒有接到弟弟的電話,但是經由彼此對待弟弟的經驗交換之下,對自己團隊的同志也有了更深刻的認識,建立更加深厚的友誼。另一方面,新田的弟弟和也其實也被哥哥不斷激勵之下受到了感動,終於開始願意接納哥哥的意見,慢慢的重新踏出房門與世界接觸……
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第50話 新田和六太
六太等人經過六天,突破了70公里,在不管往哪個方向走,景象都沒有改變的地方默默的往前走,是一種既無趣又難耐的訓練。然後偏偏就在輪到六太擔任班長的這一天卻發生了一個大問題,原來是新田的手機掉了,而且新田表示他一定要回去找回他的手機,因為這件事情關係到他跟他弟弟之間的情誼。究竟這是怎麼一回事呢,而新田最後有沒有辦法找到手機,並且跟弟弟通上電話呢……
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第49話 隊長新田
在野外求生的訓練過程中,六太所屬的E班經過了各項考驗,終於慢慢的從最後一名慢慢的提升到了第四名,而且在新田的「激勵作戰」奏效之下,大家開始凝聚了共識,並且對名次也顯得越來越樂觀,沒想到的是在第五天由六太擔任班長負責帶領大家的時候,新田突然丟擲了一顆震撼彈,究竟在新田的身上發生了什麼事情了呢……
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第48話 心中永遠放個計步器
太空飛行員候補學員-ASCAN的聯合訓練正式展開了,訓練教官波爾德早就已經下定決心,要讓他心中認定的溫室裡的花朵凋謝淘汰,因此再一開頭的時候便立刻進行了嚴酷的野外求生訓練,究竟六太等等一行人會遭遇到什麼樣的難題呢……
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第47話 最初的約定
太空飛行員候補學員被通稱為“ASCAN”,為了跟其他國家的候補學員一起接受聯合基礎訓練而來到了美國休斯敦。六太因為賢治欲言又止的態度非常在意,所以特地跑去找紫三世打探內情,紫三世的一番話果然又讓六太感到不安。後來在酒會上阿曼蒂不安的表情,又再度讓六太感到未來會有什麼事情降臨到她的頭上似的,負面情緒的潮水再度湧來,究竟今後六太到底會面臨到什麼樣的訓練呢……
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第46話 No.1的急性子
六太等一行人終於前往美國休斯敦了,在出發前紫三世又作弄六太一次,讓他在眾人面前大大的出糗。不過其實六太的災難並不僅僅只是這樣就結束了,因為在美國等著他的,是個非常幹練而且嚴苛的人。而在接受訓練之前的某天晚上,賢治突然跟六太提到紫三世曾經向他透露了一件事情……
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第45話 藍色戰隊五人組
日日人平安無事獲救之後,六太也終於鬆了一口氣。這個時候他受到莎朗阿姨的邀約到她家去作客,此行又讓他收穫滿滿,並且更加的清楚堅定自己的信念,奮勇的朝著自己的目標前進。而他們這群候補太空人在出發前往休士頓受訓之前茄子田理事長封他們為「戰隊英雄五人組」,期許他們能夠有很好的表現,但是在休斯敦等待著他們的,除了來自世界各國的菁英中的菁英之外,還有一位令他們感意外的人物出現……
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第44話 3位宇航員
日日人他們終於是在千鈞一髮之際獲救了,而且後來日日人跟六太也終於透過視訊能夠說上話了,雖然兄弟倆都想若無其事輕鬆一點,但是重要的事情還是必須要講出來的。於是最後日日人說在這次的救援行動中,其實是有三個太空人解救了他的,第一個當然就是他的老前輩布萊恩,而第二個是驅使“BRIAN”氧氣製造機過去解救他的吾妻先生而最後一位呢,就是……
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第43話 布萊恩
日日人似乎預測到自己已經沒救了,就在氧氣存量僅剩八分鐘的時刻,他決定了要去完成自己最後的心願,只是沒想到在懸崖邊時,他又看見了那道神秘的光茫,就此讓他改變了主意,卻也因此改變了他的命運,究竟那道光茫引他看到什麼?又回想起了什麼?當氧氣存量完全用完的那一刻,究竟又發生了什麼樣的事情?
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第42話 日日人的選擇
為了維持達米安的體溫,日日人把手上的照明彈用掉了。如此一來,救援人員要找到他們會更加的困難。這時候弗雷帝他們雖然已經抵達越野車墜落現場,但休斯敦方面也發現日日人真的就像六太說的那樣,人已經在遠離事故現場的20公里外了。弗雷帝他們雖然即刻趕往,然而最要命的是日日人的氧氣存量已經遠遠無法等到他們的抵達了……
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第41話 還剩80分鐘的生命
雖然日日人已經盡力設法爬出山谷,但是在一次的不小心滑落之後卻造成主氧氣儲存槽破損。雖然他們還有備用氧氣瓶,但是備用氧氣瓶的儲存量是80分鐘,在這僅剩的80分鐘之內,日日人無論如何都不能再停留在原地等待救援的到達了。另一方面,六太研判依照日日人的個性判斷,日日人絕對不會坐以待斃,因此建議讓救援的「甲蟲號」開往距離事故現場20公里遠的地點去,但卻遭到休斯敦方面的拒絕,究竟日日人接下來的處境會變得如何呢……
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第40話 天堂和地獄
日日人與達米安為了搜尋吾人探測車“吉布森”而出任務,中途卻因為一個不注意,兩人都掉入了巨大陰暗的隕石坑。雖然後來日日人找到了達米安,但是達米安卻因為腳傷而無法動彈,因此達米安想起了布萊恩所說的話,而失望的要求日日人留下他,自己一人去尋求支援。究竟後來日日人決定怎麼做呢,他們又會面臨什麼樣的問題呢……
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第39話 月球的錯覺
六太等人終於透過了層層的考驗,正式成為JAXA的一員。不過這還只是太空飛行員的儲備人員而已,緊接著他們還要接受各種的密集訓練才。另一方面,在月球上的無人探測車“吉布森”突然失去了音訊,而且狀況不明,因此NASA地面管制中心希望日日人跟達米安一起去找出吉布森的行蹤,並修復它。然而因為月球上沒有空氣而且完全沒有人工建築體的關係,所以會讓眼睛產生錯覺,沒有辦法正確掌握遠近距離。
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第38話 第11封簡訊
南波六太才剛得知合格的訊息卻馬上就要趕去記者會場,這一切都來得意外的快,讓六太有點難以接受眼前的事實,雖然他知道這並不是在作夢,但是新裡面就是不踏實,沒有真實感。而這種感覺一直持續到他收到某個朋友發來的第11封簡訊之後,他才確確實實的感受到,自己真的已經是個太空人的事實。
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第37話 大叔二人在公園相會
成為一個太空人的條件,不僅僅需要有很好的資質,同時要有很強勁的好運氣,因為在名額有限而又群雄逐鹿之下,每一份子都是難以取捨的優秀人才,JAXA接下來通知的兩名考生是六太跟溝口,他們也都是萬中選一的菁英;究竟,身為一個太空人所該具備的條件除了優秀的頭腦還需要的是什麼?真的只是運氣嗎?
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第36話 跳舞的宇航員
第二位收到最終稽核結果通知的人是伊東芹夏,她之所以會來參加甄選的原因,是因為研究細胞類的病理學醫生父親突然生了一場原因不明的腦部疾病的關係,激發了她積極想上太空為父親找到治療的方法的上進心。讓我們來看她是如何走過這段心路的歷程……
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第35話 身處廣大設施中的狹小角落
最終稽核的結果發表公佈的時間到了,所有的考生都在忐忑中度過。此時JAXA的鶴見第一個打電話的物件是賢治。賢治的日常生活看似平穩,而且往後也沒有什麼後顧之憂然而在賢治的心中對於這樣的生活其實是有所懷疑與不安的,他懷疑自己是真的喜歡目前的工作嗎?這真的是他所想要的嗎?他會不會被這種安逸的表象磨掉心中的遠大夢想呢?
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第34話 在月夜擁抱八哥犬
日日人的小組開始在月球表面進行各方面的活動,另一方面六太也在等待JAXA的合格通知電話中度過。其中的差別是日日人的每一秒都在好奇及務實中經過,而六太卻是在毫無信心,以為只能依靠好運氣的想法中渡過,這兩兄弟的兩種心情對照,令人看來不免替哥哥六太感到擔心,而合格釋出的日子也終於來臨了……
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第33話 月球的兔子
身為哥哥的總是要走在弟弟的前面,但是身為弟弟的日日人卻比六太和吾妻先生都要早一步到達月球,在六太複雜的心情中,我們隱約可以看到日日人之所以能夠更早脫穎而出的原因。雖然在哥哥日日人以及其他旁人的囑咐之下,日日人還是以他一貫的態度說出了他登陸月球之後的第一句名言,那就……
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第32話 不能進入的地方
火箭升空以後,JAXA的考生們也將回到日本去了,但是六太卻決定要一個人獨自留在休斯敦,親眼看到日日人登陸月球的那一刻。後來六太剛好有個機會遇到了吾妻,這次的相遇讓六太覺得自己對吾妻又更加的瞭解了,並且也明白了為什麼日日人會對吾妻感到非常尊敬的原因。也知道了日日人之所以能夠比吾妻還早登陸月球的原因了。
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第31話 火箭之痕
終於到了發射升空的時刻了,在大家屏息期待之下,太空船順利的進入月球軌道,接下來只等到達月球的那一刻的來臨。日日人升空之後,六太回想起日日人從小開始就對自己的目標與夢想的執著,而他的堅持與努力不懈,讓他在20年後的今天終於實現了。而老爺爺丹尼爾說的“我們的人生跟天空最大的不同是什麼?”的一番話也非常值得我們省思。
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第30話 狗和老頭子和亞歷山大
眼看著火箭即將發射升空,想不到阿波卻在這個時候不見了,大家慌忙的四處尋找。當六太找到阿波的時候,旁邊卻多了一位老先生,後來六太還被這個十分可疑的老先生載到一個很奇怪的建築物前面,究竟六太遇到的人是誰?六太會不會因為這樣而錯過了目睹火箭發射升空的過程呢,火箭發射進入了最後倒數,日日人是不是會在萬眾矚目之下順利前往太空呢……
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第29話 發射前夜
眼看著日日人乘坐的太空火箭就要發射升空了。升空的前一晚,南波一家人果然都睡不好,心都上下忐忑不安的過了這個難敖的一晚。沒想到第二天的天候影響了火箭發射的預定計劃,大家的心情都在這種五五波拉鋸下吊在半空中,而對於六太而言尤其是複雜的。更沒想到的是,在這種心情底下阿波竟然不見了……
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第28話 多哈的奇蹟
南波六太一直認為自己是出生於多哈悲劇之日的人,所以註定了要一輩子與黴運打交道,但是因為他有個個性耿直又單純的弟弟日日人的關係,逐漸讓他每每在陷入絕望的時候,為他帶來向上提升的力量。至於他所交扥出去的那片DVD裡面究竟藏了什麼樣的秘密,能夠讓他從小珍貴的儲存至今呢……
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第27話 一個提問
儘管紫三世刻意的提醒六太最好少接觸吾妻為妙,但是不信邪的六太還是決定要好好的跟吾妻對話,沒想到吾妻問了一個過去曾經問過日日人的問題,而這個問題也是過去的有名太空人布萊恩曾經問過吾妻的問題,究竟這是個什麼樣的問題,會不會成為影響六太是否能夠成為太空人的關鍵呢……
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第26話 伴隨疼痛的面試
神秘的最終稽核終於開始了,但就如同六太所懷疑的一樣,這次的稽核內容完全了無新意。所以六太更加的不解,這麼平常的面試何必特意的跑來美國。果然這是JAXA所放出的煙幕彈,其實真正的目的是為了要讓考生們以為稽核已經完全結束了,讓他們卸下了肩頭上的重擔,以最接近真實的自我接受最詳細的考核。究竟最後會是誰被淘汰了呢?
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第25話 超音速的弟弟 肌肉訓練的哥哥
六太從珍妮弗那邊聽到一些有關於吾妻跟日日人的恩怨後,又開始抱怨起自己的運氣就是特別的差,他希望日日人要儘量的與人為善,不要種下忌妒的因果。但是另一方面日日人對於吾妻的為人倒是非常的有信心,一點也不擔心吾妻會故意拿六太出氣。後來因為日日人的影響,六太也終於明白自己現在應該做的事情是為自己的弟弟好好加油才對
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第24話 最壞的審查員
六太又開始了在美國的生活,除了跟著史密斯老爹一起打工之外,也在珍妮弗的介紹下認識了日日人的備組人員羅利,並且更深入瞭解備組人員的使命。就再這個時候珍妮弗向六太傳達了一個不好的資訊,那就是有關於他的最終稽核的評審裡面有一位日本籍的太空人吾妻先生。並且告訴六太這個人可能會成為他最大的難關,究竟這是怎麼一回事呢……
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第23話 老爹與兒子與六太老公公
六太雖然取得了前往休斯敦的資格,但是他的心情仍然陷入低谷。一方面苦於沒有工作,二方面憂心摯友賢治的心情。終於JAXA來了電話通知前往美國的確定時程,這時候六太再也按耐不住的問了鶴見為什麼沒有挑選賢治而是選擇了他呢,結果他得到了一個讓他非常意外的答案……
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第22話 通往夢想的路上
甄選太空飛行員的第三次稽核終於結束了,六太在猜拳的情況下沒有獲選可以前往波士頓,但是因為後續JAXA還會在落選的人員裡面保留幾個名額,也因為這樣,讓六太的心情一直懸在半空中,他既懷疑自己的好運氣在美國已經用盡,也懷疑如果只有一個名額的話,那麼篤定會獲選的人再怎麼說也是非賢治莫屬了。就在這種複雜南安的心情之下JAXA終於公佈了增加員的名額……
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第21話 久違的天空
在密閉艙房之中的兩個星期,最後的考題是要各班的夥伴們自行選出兩名最適合當太空飛行員的人。在六太這一班是以猜拳來決定,最後很顯然的賢治跟六太還有古谷都落選了,不過他們各自對於這個從小就建立起來的夢想,依舊滿懷著期望,一點也沒有因為未來的不確定而氣餒。
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第20話 最嚴酷的考驗
在密閉艙房的生活終於進入到最後一天了,而今天的考題竟然是自由活動,但是所附帶的條件是在下午四點之前必須選出兩個適合成為太空飛行員的人選才行,這給大家帶來非常大的影響,每個人都有自己自私的部分,但是也希望能受到公平的待遇,於是彼此心中都在不斷的拉鋸,究竟最後他們找出選出適合人選的方式了嗎?
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第19話 說再見的前一天
就在密閉艙房生活即將結束的時候,賢治所在的B班突然有了很大的轉變,因為賢治終於找到了改變大家相處氣氛的方式,而這也是JAXA的考試官所期望看到的結果。另一方面六太這一班也在問題不斷之中經歷各種的考驗,他們不但沒有被這些衝擊所擊潰,對彼此的友情反而更加的堅定,但是他們卻即將面臨最後最難的抉擇……
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第18話 加耶!賢治!
JAXA持續給大家下達了故意製造事端的指令,六太終於也拿到了綠卡,不過他對A班的成員感到十分的放心。但另一方面,賢治所在的B班情況可就沒有那麼順利了,內鬥的情況不斷的在加劇,賢治感受到前所未有的壓力,讓他有不如歸去的想法,究竟他有沒有辦法順利的突破這些由JAXA刻意製造出來的壓力測試呢……
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第17話 犯人就在我們之中
繼B班之後,A班的密閉艙房也跟著出現深夜擾人清夢的警鈴聲,可是不管怎麼找也找不到警鈴或是聲音的來源。但是六太卻發現阿靖的舉止開始出現反常,所以讓他想起當時福田也是這樣。這一連串的反常,引發他開始回想到自己去美國找日日人的時期所發生的一些事情。原來從住進密閉艙房之前開始,這段日子所發生的一些事情,都是JAXA有計劃性的策略,究竟JAXA為什麼要這樣做呢?
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第16話 只有警鈴,沒有時鐘
雖然六太親眼看見是福田卸下了牆壁上的時鐘,但是並沒有在大家面前拆穿他,只是單獨找他問這樣做的原因,而福田卻說,等六太發現真正原因的話,到那時他們倆來握手吧這樣的話。古谷一直認為是六太是真兇,六太很認真的對古谷說他弄壞時鐘的並不是自己,但是古谷卻一反常態的說是誰都無所謂了,這讓六太很意外……
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第15話 大家來聊聊宇宙吧
星加批准了古谷的請求,給福田準備了一副新眼鏡,拿到眼鏡的福田對古谷表示感謝,大家都很開心。B艙內連續兩晚有鬧鈴響起,向管制室投訴但得到的答覆都是艙內所發生的問題自己解決,因此組內意見叢生。躺在床上的真壁也在想用分數制決定兩名人選的辦法是不是錯了。而A艙內,古谷把大家叫醒,告訴大家掛在牆上的時鐘不見了……
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第14話 壞掉的眼鏡與腳底
古谷踩碎了福田的眼鏡,雖然福田裝作一副沒事人的樣子,但是大家都明白他現在的狀況很不好,課題的完成效率也在下降。雖然大家都是競爭對手,處於不利位置的福田某種意義上來說對大家有利,但是大家卻都高興不起來。當古谷知道福田為了此次選拔辭去工作後,心情難安的他拜託監考官替福田準備一副眼鏡……
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第13話 三次元螞蟻
六太把空氣算盤想的過於逼真,跑步的時候算珠也跳個不停,結果只答對了4道題。對宇宙開發持批判態度的監川主持人,她的發言非常有影響力,看過她訪談節目的觀眾開始輕視宇宙開發這項工作,讓大家寫出一份能得到她認同的文章。六太想起了小時候和日日人聽到的宇航員野口的“三次元螞蟻”理論,他認為,帶監川親眼去看看宇宙,是最好的證明……
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第12話 我的名字叫伊東芹夏
茄子田提出了第一個問題,讓大家計算現在幾點,六太五人給出的答案各不相同,福田問起六太為何會認為是三點,於是六太給出了自己的解釋,雖然受了歐吉的影響誇大其辭了一番,但卻贏得了眾人的信任,決定以他的答案為準,真壁組的富井熄燈後並沒有睡著,根據富井的推算,真壁組也得出了答案……
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第11話 被關起來的對手們
載著參加測試人員的大巴,終於到了像謎一樣的第三次測試會場。在領隊的帶領下,大家來到了被Jaxa職員稱之為“最後的房間”的地方。在簽字之前,向眾人播放了以前發生事故的錄影帶,記錄了墜毀前三名宇航員直面死亡的從容。看過錄影的眾人義無反顧的簽了名,於是被分為三組,最後一天在全員意見一致的基礎上,每組選出兩名有資格成為宇航員的人……
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第10話 巴士巴士沖沖衝
大家各自有著奮鬥的理由,但是自己沒有特別的動機卻還是很興奮,於是六太去了莎朗那,訴說了自己的煩惱,溫柔的莎朗解開了六太的心結,六太甩開了包袱,去接受第三輪測試。隨著茄子田理事長宣佈測試開始後,大家被請上了一輛封閉嚴實的大巴,毫無說明就讓大家有好的交談十分鐘,一輪過後,發了一張答題卡,讓寫下最適合當宇航員的人的姓名……
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第9話 各自的覺悟
六太終於進入了第三階段稽核,但是這時候他發現了每個想要成為太空飛行員的人,身上都揹負著一個巨大的夢想並且為了實現這個夢想,在心理上都已經做好了可能會犧牲某些重要事物的覺悟。而身為家人的人,同樣也早有心理上的準備,這讓他驚訝於自己並沒有什麼準備也沒有什麼顯著要去完成的目標……
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第8話 白煙天國
六太勇鬥滅火器男,被人爭相傳誦,在美國掀起了一股浪潮。當事人應邀上電視節目,重現當時六太的颯爽英姿,雖然歐吉在觀眾面前說的有些添油加醋,但他告訴六太,運氣也是實力之一。日本Jaxa的茄子田理事長也看到了報道,他的一句話,對六太的前途起了巨大的作用。身在美國的六太,也收到了父母寄來的標題為“六太第二次審查結果報告”的錄影郵件。
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第7話 日日人親啟
得知被間寺油加醋的給Jaxa人說了一番後,心情不好的六太進入了“滾來滾去六太”模式,在日日人的追問之下,六太終於對日日人說出了原因,以及回國以後的打算,不想卻被日日人鄙視,想要給日日人留書一封然後回國。另一方面,星加先生也在努力的為六太爭取他所缺少的運氣,就在決定人選的當天,六太在美國被捲入了一起重大事件中……
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第6話 縈繞在腦海中的其他因素
看到日日人的訓練,六太有驚訝也有羨慕。在電視節目上日日人對哥哥大加讚賞,讓電視機前的六太感到不好意思,鑽進了被窩,這時,電話響了,是以前單位同事打來的,告訴他由於間寺董事對他持有恨意,所以Jaxa打電話過來調查時他被辭職的原因時,被間寺添油加醋的說了一番,這讓六太感到了絕望,但他想不到的是,有人卻再背後幫助著他……
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第5話 有所欠缺的日日夜夜
雖然沒面子見日日人,但抗拒不了NASA的誘惑,來到了休斯頓。剛到約定地點,六太就被一個叫阿波的狗緊追不捨,就在他疑惑期間,從後面傳來了日日人的聲音,原來這是他養的狗。到了日日人的住處,六太就開始絮叨日日人懶得管細節的習慣到現在也沒有改,開始一一挑毛病,做好飯的日日人在院子找到了六太,兄弟倆就那樣說起了往事……
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第4話 日日人的旁邊
第二輪的審查終於要落下帷幕,六太自信滿滿的邁向面試的舞臺。出來後看見牆壁上日日人的照片,感慨萬分,弟弟的身旁,怎能沒有哥哥的身影,於是在日日人照片的旁邊,留下了屬於自己的印記。參加完第二輪緊張審查的一眾人去聚餐,六太詢問了真壁某個問題的答案後,有種被打入冰窟的感覺。剛買好電話的六太,接到了日日人來電……
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第3話 有利的男人與奔跑的女醫生
第二輪的審查,也繁雜無比。運動負荷測試中,讓所有人大為吃驚的是伊東芹夏,她是這些人中堅持時間最長的。與真壁閒談的六太,被溝口找茬,認為身為日日人的哥哥可以獲得很多情報,雖然最後溝口說是開玩笑的,但還是讓六太感覺不爽。測試完畢後,六太自認為很囧的行為被伊東看到,而第二天,卻發現伊東也做著跟他同樣的動作……
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第2話 我的閃亮寶物
雖然透過了書面篩選,但六太並不打算去,他覺得自己筆試肯定過不了。莎朗阿姨並沒有勸說他,只是談起了六太小時候的事情,讓六太回想起了以前的自己,最終決定要實現去宇宙的夢想。書面篩選、筆試一一闖過,六太迎來了面試,當六太坐上面試準備的椅子後,發現椅子下面有顆螺絲鬆了,想要擰緊螺絲的他覺得自己面試的一塌糊塗……
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第1話 弟弟日日人與哥哥六太
深夜森林探險的日日人與六太兩兄弟發現了不明飛行物,一瞬間飛往了月球,當晚兩兄弟約定好了以後一起當飛行員。如今,長大的日日太已經實現了夢想,因為上司對弟弟出言不遜,所以六太用頭槌撞倒了上司,結果被解僱。遣返回鄉的六太迫於父母的壓力,進行求職活動,日日人知道後拜託母親幫他一個忙,於是某日,六太收到了宇航員選拔的通知……