《魍魎之匣》
《魍魎之匣》的舞台在戰後的東京,美少女的分屍案件讓世間的人心忐忑。
此時退休的女藝人 柚木陽子的妹妹行蹤不明,祭祀著匣的奇妙靈能力者,巨大的匣形建築物…等,所有奇怪的事件都有著關聯。
就待身兼解謎偵探和陰陽師身份的 京極堂,逐一揭開真相。
STAFF原 作:京極夏彦動畫制作:MADHOUSE企 畫:丸山正雄監 督:中村亮介系列構成:村井さだゆき角色原案:CLAMP 角色設定:西田亞沙子
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第1話 天人五衰の事
戦後の混乱がようやく収まった昭和27年。私立の女子校中等部に通う榎本頼子は、クラスメートの柚木加菜子と言葉を交わすことが多くなっていた。人形の頭を作る職人の母・君枝と二人暮らしの頼子の家は、決して裕福ではない。それなのに、クラスの誰よりも聡明で気高く美しい加菜子が、なぜか頼子だけに話しかけてくるのだ。頼子は、不思議なことを言い、難しい文芸誌を読む加菜子に戸惑うが、互いに孤独だった2人は次第に親交を深める。頼子は、そんな加菜子から、“天人五衰”という言葉を教えてもらった。それは、天上界に住む天女が、衰えて死んでいく際の五つの兆しを現した言葉だった。 “頭上の花蔓がしぼむ”“衣に垢がつく”“腋の下から汗が出る”“目が眩む”“なんだか楽しくなる”―それだけの兆候で、天女は死ななければならないらしいのだ。そんな折、頼子は、君枝が作る頭の胴体部分を作っている笹川から、頭と胴体が合体した木目込み人形をもらった。木目込み人形は、京都・上賀茂神社の祭具をしまう箱の余り木で作ったのが始まりだったことから、魂をしまっておく箱だという笹川。手にしたその人形の瞳がギョロリと動くのを見た頼子は、思わずそれを落とし、家の外に飛び出してしまった。夜の土手で頼子が出会ったのは、月の光を浴びていたという加菜子だった。日の光が生きるために、つまり死に近付くためのものだという加菜子は、月の光だけが命の呪縛から逃れられると言い切る。頼子は、迎えの男がやって来た加菜子がどのような素性なのか、その時、まだ知らなかった。まもなく、なぜ自分と付き合うのか、という素朴な疑問をぶつけた頼子に対し、加菜子は、奇妙なことを口にした。加菜子は、君は私の、そして、私は君の生まれ変わりだというのだ。すっかり加菜子に感化された頼子は、夏休みに一緒に旅行をしようと加菜子に誘われ、中央線の駅で待ち合わせるが―。
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第2話 狸惑わしの事
加菜子が電車にはねられた駅のホームに、偶然居合わせた警視庁刑事の木場修太郎は、顔を覆って泣きじゃくる頼子から事情を聴いた。だが、17歳の少女と話が噛み合うはずもなく、木場は苦虫を噛み潰すばかり。現場検証が始まる中、頼子から加菜子の様子を聞かれた木場は、何も答えることが出来ない。加菜子は現場近くの病院に運ばれたままで、まだ木場には連絡がなかったのだ。事故か自殺か、それとも殺人か。木場は、非番だったにもかかわらず、真相を様々に推理しながら、頼子を病院に連れて行った。病院には、加菜子の関係者たちが詰め掛けていた。横柄な口を利きながら名前すら明かさない男、雨宮と自己紹介をしながらなぜか保護者を名乗る男。そんな中、木場は、加菜子の姉と言って現れた女が、元女優の美波絹子だと知り、ア然となった。木場も大ファンだった絹子は、2年程前、理由を明かさないまま引退し、現在は柚木陽子の本名を名乗っていたのだ。病院に君枝が頼子を迎えに来て程なく、増岡というらしい横柄な男、雨宮、陽子の3人が、疑惑の眼差しを向ける木場の前で、なにやら揉め始めた。そして、陽子は、加菜子を自分が懇意にしている名外科医がいる別の病院に移す、と告げた。応急手当をした医師は、瀕死の状態らしい加菜子を一刻も早く転院させるよう勧めた―。半月後、この事件の存在を知らない小説家の関口巽は、東京周辺で発生したバラバラ事件を、雑誌編集者の鳥口と共に取材していた。友人・中禅寺秋彦の妹で、別の出版社の編集者・敦子と現場で一緒になった関口は、取材の後、鳥口が運転する車で帰り道を急ぐ。取材したバラバラ事件は、近郊の湖で、鉄製の箱に入った若い女の両足が見つかったというもの。鳥口は、“ハコ”に関連して、落とした憑き物を箱の中に封じ込める『穢れ封じの御筥様(おんばこさま)』という憑き物落としのことを話題にした。まもなく、関口らは道に迷い、奇妙な箱型の建物の前に来てしまい―。
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第3話 羽化登仙の事
加菜子を転院させる準備が始まる中、陽子ら3人の話を聞いた木場は、増岡が弁護士で、この事件に誰かの遺産相続が絡んでいる、とにらんだ。やがて、加菜子を乗せた救急車と木場らが乗った福本のジープが出発。2台の車は、木々の中に浮かび上がるハコ型の建物の前に到着した。この建物は、美馬坂幸四郎という男の研究所で、他に須崎という医師と、甲田というエンジニアが働いている。地元の人が、一度入った患者は二度と出てこられないと噂する怪しい場所だった。そして、この夜、移送された加菜子は、美馬坂らの手術で奇跡的に命を取り留めた。自分の仕事のことも考えず加菜子の事件に掛かりっきりになっていた木場は、ある日、加菜子を誘拐するとの脅迫状が陽子の元に届いた、と知った。研究所の所在地が神奈川県内だったため、県警は、警部の石井の指揮の下、多数の警官を動員して周囲を固める。木場は、加菜子の背後にいるのがかなりの大物だとにらんだ。加菜子の事件以来、頼子がその現場にいたと知った君枝は、精神に異常を来たし始めていた。頼子に魍魎が付いていると言い出す君枝を見て、穢れ封じの御筥様の教主・寺田兵衛を呼び、お祓いをしてもらう笹川。呆れ顔で家を飛び出した頼子は、この時、自分を尾行する男の存在に全く気付かなかった。まもなく、研究所の裏にある焼却炉の上で事の成り行きを見守っていた“管轄外”の木場は、訪ねてきた頼子から、黒服の手袋をした男が加菜子を突き落とした、との証言を得た。木場は、その男こそ犯人だと考えながら、頼子と一緒に加菜子を見舞った。医療テントの中の加菜子は、頼子らが来ると同時にゆっくりと目を開き、何かを言おうとする。ところが、頼子らと入れ違いに美馬坂と須崎がテント内に入ると、加菜子が何とベッドの上から消えていて―。
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第4話 火車の事
たった今、見たばかりの加菜子がベッドの上から消えたと知った木場、陽子、石井らは、驚愕した。見張りの警官の話によると、木場らが加菜子を見舞った後、病室から出たのは、美馬坂と須崎だけ。雨宮は、木場、頼子らが到着する前に研究所から出て行ったらしい。木場は、加菜子に関する詳しい事情を明かすよう求めるが、陽子はあっさり拒否。程なく、須崎の他殺死体が、研究所裏の焼却炉の前で発見された。その頃、関口は、近々発売される自分の短編集について相談するため、出版社『稀譚舎』の編集室に来ていた。担当の編集者たちの話題になっていたのは、関口に作風が似ているらしい若手の作家・久保竣公と、最近、武蔵野周辺で頻発しているバラバラ事件のこと。相模湖で見つかったのとは、全く別人の2本の右腕が、東京の西部で発見されたのだ。加菜子の駅での事故から1ヶ月ほど後、木場は、管轄外の事件にクビを突っ込んだとの理由で、謹慎処分を受けていた。陽子から、改めて、加菜子を助けて欲しいと頼まれた木場。加菜子が消えた後、須崎が殺され、雨宮まで失踪していた。だが、自宅の下宿に缶詰状態の木場には、何も出来ない。そんな折、木場の元に、後輩刑事の青木が相談にやって来た。青木が担当しているのは、例の武蔵野バラバラ事件。青木は、このヤマが加菜子の誘拐事件と関係しているのではないか、と考えたのだ。バラバラ事件は、大垂水峠に落ちていた右腕と相模湖で同じ人物の両脚が、共に金属製の匣に入って見つかったのが、発端だった。それ以降の事件は、腕が全て桐の木匣に収められている。青木の話によると、身元の判明した被害者たちには、今のところ関連性が見つからない。しかし、被害者の周辺で、黒い服を着た黒手袋の男がいた、との目撃情報があった。まもなく、昔の陽子を知る映画監督の川島を訪ねた木場は、陽子が誰かに強請られているとの噂が流れた直後、引退していたと知った。そして、美馬坂が、戦時中、フランケンシュタインのような死なない兵隊を作る研究をしていたことも明らかになった。
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第5話 千里眼の事
加菜子の事件が起きる60年あまり前、東京で超能力者との噂のあった2人の女の透視能力検証実験が行われたことがあった。検証は有名大学教授らの立会いで行われたが、2人の女の死によって解明されず、結局、その結果はウヤムヤのまま。だが、その透視能力が、探偵の榎木津礼次郎には本当にあるらしかった。ある日、榎木津の事務所に、増岡と名乗る男が訪れて調査を依頼した。増岡は、柴田財閥に関連する団体の弁護士。その依頼内容は、元女優・美波絹子こと柚木陽子の娘・加菜子を捜して欲しい、ということだった。柴田財閥の創業者・柴田耀弘は、一代で莫大な富を築いた男。妻子に先立たれた耀弘は、自分の血を唯一受け継ぐ者が、戦死した孫が女優・美波絹子との間に作った加菜子だと知り援助を続けてきた。ところが、先日、脳溢血で倒れた耀弘は、孫の実子と確認された場合、全財産を加菜子に譲るとの遺書を書いた。そして、一昨日、その耀弘が死亡したという。加菜子が生きていれば、陽子にもその遺産の分け前が回ってくるのだ。一方、短編集に載せる作品の順番で悩んでいる関口は、三鷹の御筥様を潜入取材して失敗したという鳥口から話を聞いていた。取材した信者の8割がひどい目に遭っているという鳥口は御筥様が絶対インチキ宗教だと断言したのだ。それが自分の専門外だと察した関口は、鳥口を連れてやって来た所は、一軒の古本屋。関口が、その屋号から「京極堂」と呼ぶ、主人の中禅寺秋彦は、鳥口も良く知る敦子の兄であった。関口らが迷い込んだ四角い研究所は調べない方が良いと忠告する京極堂。鳥口は、肝心の話をする前に、幼い頃の自分の出来事を、この京極堂にピタリと言い当てられて、ア然となった。
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第6話 筥の事
予告もなしにやって来た初対面の鳥口の幼い頃の情景を、まるで千里眼のように当てて見せた京極堂。タネ明かしを求める関口に対し、京極堂は、観察眼、推理力、豊富な知識を元に論理的に導き出した結果だ、と答える。安倍晴明を祀ってある神社の神主で、陰陽師でもある京極堂は、まもなく、心霊術、超能力、占い師、霊能者、宗教者の違いについて、それぞれ具体的に説明した。なぜそんな話をしたのかと聞く関口に、京極堂は、鳥口がその種の話を聞きに来たからだと答える。つまり、京極堂は、鳥口が相談しに来た内容を推理した上で、説明していたのだ。京極堂に心酔した鳥口は、さっそく本題の相談を始めた。鳥口が、関口とバラバラ事件が発生した相模湖に行く1週間ほど前、鳥口の会社の編集部に、清野という男から、穢れ封じの御筥様という新興宗教の信者リストを売りたい、との電話があった。この御筥様と呼ばれる教主がやっていることは、不幸を取り除くことらしい。そのリストには、300名ほどの信者名が書いてある。清野は、いくらでもいいから、必ず記事にして欲しい、と頼んでいたのだ。鳥口は、御筥様の道場の様子を探るため、潜入取材を試みたばかりだった。だが、あっさり教団側に出身地や職業を当てられ、慌てて逃げて来たらしい。話を聞いてそのトリックを全て解明した京極堂は、その後、周辺取材をしたという鳥口の話に耳を傾ける。御筥様の教主は、以前、箱職人だった寺田兵衛。木工細工師だった父親の跡を継いだ兵衛は、箱職人に転向。そして、兵衛の祖母の残した壺の中の紙を見た後、しばらくして信者が集まり始めたらしい。その紙に「魍魎」と書いてあったと知った京極堂は、思わず困った顔をして見せた。
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第7話 もうりょうの事
“心に囲いを作ると魍魎が宿る”というのが御筥様の教えだと説明する鳥口。関口と共に話を聞いていた京極堂は、日本や中国の古典を引用しながら魍魎の話を始めた。そして、ひとしきり魍魎に関する薀蓄を語った後、京極堂は、御筥様の教主がそのイメージを的確に捉えていると告げた。そんな京極堂に対し、鳥口は、いきなり御筥様の教主が連続バラバラ事件の犯人だと言い出した。鳥口が京極堂と関口に見せたのは、警察の内部資料となっている失踪少女の一覧表。鳥口は、まずバラバラ事件で身許が判明した唯一の少女が、清野が持ってきた御筥様の帳簿に載っていると告げる。失踪少女の一覧表で、バラバラ殺人事件の被害者の可能性が高いのが13人で、その内7人が御筥様の信者の娘だと言うのだ。だが、関口は、なぜ御筥様がバラバラ殺人を犯すのか分からないと疑問を投げかける。京極堂も、判断を下すにはもう少し御筥様についての情報が欲しい、と鳥口に要求した。京極堂が欲しいのは、御祓いの具体的な方法、呪文のやり方と呪文の種類、祭具は何を使うのか、ということ。さらに、清野が持ってきた帳簿の情報を警察に流すように、との指示も下した。京極堂が例の四角い研究所にくれぐれも近づかないよう念を押す中、関口は、本朝幻想文学新人賞を受賞した久保竣公の名が御筥様の帳簿に載っているのを見つけて―。
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第8話 言霊の事
久保竣公の小説から受けた嫌な気分を消すために、御筥様信者の名簿を書き写す単純作業に没頭した関口。その関口がバラバラ事件の検死を担当した監察医の里村を訪ねた日、木場もまた里村に話を聞きに来ていた。木場の目的は、バラバラ事件の被害者に、加菜子がいないか、ということ。里村は、相模湖の死体以外は、血液型が違うため別人だと断定する。相模湖の事件の際、加菜子がまだ誘拐されていなかったことを考えると、被害者の中に加菜子はいないことになる。そして、里村は、犯人が人体実験でもするように、バラバラにするために殺したのではないかとも話した。人体実験と聞き、木場は、ふと例の匣型の建物、美馬坂近代医学研究所の主・美馬坂幸四郎のことを里村に聞いてみた。すると里村は、美馬坂が、戦時中、死なない兵隊を作る研究をしていた、と明かす。もし、研究所内にバラバラ事件の犯人がいるとすると、容疑者は、美馬坂と技師の甲田の2人だけだ、と木場は思った。その頃、鳥口と共に京極堂を訪ねた関口は、そこで増岡に頼まれて加菜子の捜索を進める榎木津と出くわした。京極堂に促されて御筥様周辺の調査報告を始めた鳥口は、次々と新しいネタを披露する。御筥様の常連で、20歳前後の白い手袋をはめた男が、去年の夏に大量の箱を寺田に注文したこと、道場内に血の付いた鉄製の匣が飾ってあること―。さらに、鳥口は、道場の隣家で録音した御筥様こと寺田兵衛の祈祷の声を紹介し、また、道場内の見取り図を示した。そんな中、加菜子の友達が楠木頼子だと知った関口は、その名前が御筥様信者の名簿の中にあった、とポツリと口にした。この話を聞き、今まで見せたこともない狼狽した表情の京極堂。「これは大変善くない」と言い出すその京極堂の前に、木場もやって来て―。
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第9話 娘人形の事
木場に命じられた福本が頼子の周辺捜査を進める中、関口と榎木津は君枝を訪ね、留守だと知ると、近くの喫茶店に入った。そこで2人が出会ったのが、若手新進小説家の久保竣公だった。加菜子を知っているか、との質問に、知らないと答える久保。だが、榎木津が示した写真を見ると、久保は一転震えて動揺し、写真を貸して欲しい、と頼み込む。久保と別れた2人は、いつも手袋をしているらしい久保が、何本かの指を欠損しているとにらんだ。まもなく、再び君枝の家に行った関口と榎木津は、その前で、頼子に声を掛けられた。木場の名前を出した関口に、頼子は、君枝が玄関などにクギを打ったと明かし、知っていることは全て警察に話した、と告げる。そして、人と約束していると言い残し、姿を消してしまった。家の中に君枝がいるとにらんで中に入り込んだ2人は、首吊り自殺をしようとしていた君枝を見つけた。問い掛ける榎木津らに対し、君枝は、“この家が自分を魍魎にした”と言い、御筥様のご託宣だと答える。御筥様がインチキだと言い切った2人は、言葉たくみに君枝を説得し、頼子の身の安全を図るよう告げた。その頃、木場は、陽子を訪ねて、その後の事情を聴いていた。陽子の神奈川県警に対するウソを暴いた木場は、姿を消した雨宮が、加菜子を連れ去った犯人ではない、と断定する。陽子は、頼子が話した手袋の男が怪しい、と話した。京極堂は、やって来た関口の話から久保が手袋をしていると知り、顔をくもらせた。そこにやって来た青木の情報によると、頼子が一昨日から家に帰っていない、とのこと。加菜子殺害未遂事件、加菜子誘拐事件、須崎殺人事件、バラバラ死体遺棄事件―みんなの話を聞いていた京極堂は、その中のバラバラ死体遺棄事件の犯人が久保だと断定。その直後、本部から青木の元に、頼子の両腕が発見されたと連絡が入った。
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第10話 鬼の事
久保が本当に犯人なのか、という関口の問に、京極堂は、その理由を明かし始めた。バラバラ連続殺人事件の3人の被害者の家庭が御筥様の帳簿に載っていたこと、久保が幼少・青年期の生活環境が御筥様の祈祷などに影響を与えていること、久保の作品にそれらの全てが投影されていること―。御筥様を作ったのが久保だと断定する京極堂は、その猟奇的な小説の内容が、想像の産物ではなく、実際の出来事を日記風にまとめたに過ぎない、と話した。まもなく、関口と榎木津を伴い御筥様の道場に乗り込んだ京極堂は、その化けの皮を剥がしにかかった。無数の箱が置かれた道場内で、教主・寺田兵衛と相対した京極堂は、その膨大な知識と観察眼で、攻勢を強めた。寺田は、最初こそ威勢がよかったが、本物の陰陽師である京極堂の話に何も反論できない。やがて、御神体の箱の中に、息子・久保の指が入っていると言い当てられた寺田は、力が抜けたようにヘタり込んだ。京極堂らの尋問に対し、息子の犯行に薄々気付いていたらしい寺田は、久保との関係を自供。一昨年以来、寺田が久保の言いなりだったことが明らかになった。だが、バラバラ連続殺人事件の終結を宣言したものの、京極堂は、加菜子の事件は、今さら真相を暴く必要はない、とそれ以上触れなかった。その頃、木下と共に久保のアトリエに入り込んだ青木は、突然、殴りかかってきた久保を取り逃がしてしまった。無数の箱が壁を埋め尽くす部屋の内部を調べた青木は、ひとつの箱の中に、頼子の頭部と体がきれいに収められているのを発見。だが、問題の久保が、まもなくバラバラ死体で発見されたため、一連の事件は、再び振り出しに戻ってしまった。
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第11話 魔窟の事
久保が殺された、との連絡が入る中、関口、鳥口、榎木津の3人は、沈黙を守る京極堂に、バラバラ連続殺人事件と他の事件との関係を質した。だが、京極堂は、その質問には答えないまま、自分と美馬坂の関係を明かし始めた。それによると、京極堂と美馬坂は、旧知の間柄。京極堂は、戦時中、陸軍の研究所だった例の箱型の建物内で、異教徒を国家神道に改宗させるための洗脳実験をやらされていた。その時、美馬坂は、そこで死なない兵士、人工臓器の研究に没頭していたらしいのだ。まもなく、入院中の青木を訪ねて久保の遺体の状況を聞いた京極堂らは、発見されたのがその両手と両脚だけだと知った。それらはヒモで括られた状態で発見されたのが、青木は、室内の状況から久保がバラバラ連続殺人事件の真犯人だと断言する。その青木から、謹慎が解けた木場が拳銃を持って外出した、と聞いた京極堂は、慌てて関口らに追いかけるよう指示。木場の行き先が美馬坂の研究所だとにらんだ関口は、京極堂に言われたように、途中、陽子をひろって、車を急がせた。実は、少し前、木場は、陽子を訪ねて事情を聴いていた。その際、木場は、柴田の死を知った陽子が加菜子に代わって巨額な遺産を相続する、と知ったようであった。その頃、箱型の研究所のドアを蹴破って侵入した木場は、出てきた技術者の甲田を倒して、美馬坂に迫っていた。美馬坂が、加菜子を生かすために、他の娘たちの臓器を使ったと推理した木場は、真偽を直接質す。そして、推理を否定された木場は、持っていた拳銃の銃口を美馬坂の額に突きつけて――。
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第12話 脳髄の事
関口、榎木津、陽子らが箱型の研究所に到着したのは、木場が美馬坂に向けた拳銃の引き金に指を置いた直後だった。その場の状況を見た陽子は、美馬坂が自分の父親だと叫ぶ。榎木津は、木場の立場を考え、顔面にパンチを浴びせた。まもなく、京極堂が姿を見せたことから、美馬坂の研究所は、一連の奇怪な事件を解き明かす場となった。舞台に揃った役者たちは、京極堂らの他、編集者の鳥口、増岡弁護士、福本巡査、木場の後輩の青木刑事ら。研究所の周りには、警官が集結していた。京極堂が最初に解説したのは、武蔵小金井駅での、加菜子の事件だった。突き落とした真犯人が頼子だと告げた京極堂は、その頼子が犯人だといった黒ずくめの男が自分だったと明かす。そして、関口の小説を読んだ頼子が、その影響を受けて犯行に及んだ、と付け加えた。京極堂が次に話したのは、陽子の周辺に関すること。須崎が、陽子のある重大な秘密を握って近づいた強請り屋だったと明かした京極堂は、それが加菜子が柴田の孫娘ではなかったことに関係している、と続ける。この事実を知った増岡は、加菜子が柴田の直系だと信じていただけに驚愕。一方、木場は、この話を聞いて美馬坂が激しく動揺するのを見て、いぶかしがる。京極堂は、それまで柴田の遺産には全く興味を示さなかった陽子が、急に相続すると言い出した理由が、加菜子の事件にあった、と話した。人を生かすことに没頭していた美馬坂の研究所は、その維持に多額の費用が必要とされた。陽子は、“生かされていた”14歳の加菜子が人生を全うするために多額の資金が必要になると考えたのだ。だが、須崎は、その遺産の詐取を計画していた。陽子、美馬坂、雨宮を丸め込んだ須崎は、独自の生命維持法を持っていたことから、柴田の死を待つ陽子に、加菜子を生かしてやる、と持ちかけた。そして、あの日、須崎は、脳髄だけで生きていた加菜子の頭部を小さな箱に詰め、みんな前から、まんまと持ち出したのだった。
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第13話 魍魎の匣、あるいは人の事
美馬坂の研究所に、今収まっている意識の主が久保だと告げる京極堂。関口ら全てが部屋の中を見回す中、京極堂は、ごく普通の若手の幻想作家だった久保を殺人鬼に変えた原因を明かし始めた。養母の葬式に出るため夜行列車に乗った久保は、匣入りの生きている加菜子の頭部を見せられた。匣を持っていたのは、研究所から匣を持ち出した須崎ではなく、雨宮。陽子に付き添って14年も一緒に暮らしてきた雨宮は、実は陽子ではなく加菜子を愛していたのだ。武蔵小金井駅での事故の後、雨宮は、加菜子をそのままの形で死なせてやろうと主張した。しかし、須崎は、腕を一本だけ生かし、それを遺産受け取るための証拠にしようと決断。残りの3本の手足をもらった雨宮は、それを水葬にしようと相模湖まで運んだ。つまり、相模湖で発見された最初のバラバラ事件の腕と脚は、加菜子のものだったのだ。だが、雨宮は、さらにインパクトのあるものを見てしまう。それは、須崎が持ち出した匣入りの加菜子の頭部。須崎を殴り殺して頭部を奪い取った雨宮は、匣に入れたそれを夜行列車の中で久保に見せた、というわけだ。加菜子の幻影に取り付かれた久保は、同じ物が欲しくなり、次々と少女を殺し始めた。少女の匣詰めにことごとく失敗した久保は、美馬坂のことを知り、研究所にやって来た。美馬坂は、この久保の希望に従って生体実験を行い、その頭部を匣に入れてしまった。京極堂は、次に美馬坂の話を始めた。戦後、研究所を維持するための資金に事欠いた美馬坂は、須崎の遺産詐取計画を見て見ぬふりをしていた。これに懸命に反論する美馬坂。そんな美馬坂を懸命にかばう陽子。まもなく、美馬坂が、京極堂と木場に責められるのを見た陽子は、衝撃の事実を明かして―。